野村克也「松坂大輔が技巧派たる所以を語ろう」

原点能力がもう少し高ければもっと大成功した

松坂ほどのスピードと球種があれば、いくらでも三振がとれ、抑えられると思われる。ところが、実際はそうではなかった。空振りしてもおかしくないストレートを打ち返されたり、緩いカーブやチェンジアップにも反応されたりするシーンが多々あった。

(写真:AP/アフロ)

なぜか。原点能力が低いからである。だから、甘く入ったボールを痛打されたり、変化球頼みになったところを狙い打ちされることが多かったのだ。

2007年にメジャーリーグへ行ってからも、制球難は変わらなかった。フォアボールを連発してランナーをため、大量失点することがしばしばあった。そのうえ、右バッターのインコースへのコントロールも悪かった。だから、インコースとアウトコースのコンビネーションがうまく使えず、攻め方が苦しくなり、単調になることが目立った。もう少し原点能力が高ければ、アメリカでももっとすごい成績をあげられたと思う。

右ひじ手術の後遺症が原因

レッドソックスとメッツで通算56勝をあげたあと、松坂は日本球界に復帰した。彼のフォームを見て、私は「もう復活は無理だろう」と思った。

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松坂は2012年に右ひじの手術を受けた。その後遺症なのか、明らかに投げ方がおかしかったのだ。どこかをかばっている投げ方をしていた。首をやたらに振っていたのがその証拠だ。肩が痛くて腕がいうことをきかないから、首を振ることになるのである。実際、ソフトバンクでの3年間で一軍登板は1イニングだけだった。

その後、テストを受けて2018年、中日に入団。6勝をあげ、オールスターにも出場、カムバック賞を受賞した。久しぶりにピッチングを見たら、ずいぶん投げ方がよくなっていた。かなり治ったのだろう、首を振ることが少なくなった。もはや150キロは投げられないが、スピードよりコントロールを意識するようになったようだ。

2019年は春季キャンプでファンから腕を引っ張られて右肩を負傷し、出遅れてしまった。現役晩年を迎えたかつての怪物は、来シーズン以降いかなる変貌を見せてくれるのか。私は楽しみにしている。

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