トランプが「弾劾騒動」をあえて煽っている意味
自国の官僚や捜査当局を信用していない
これまでのところ、トランプ大統領の強気の作戦は成功しているように見える。
米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の選挙予測によれば、バイデン氏は、現在、トランプ大統領との直接対決で6.7ポイントの差をつけているものの、民主党内の候補者指名争いでの勢いは衰え、左派のウォーレン上院議員が10月初旬、首位に躍り出た。
15日の候補者討論会では、バイデン氏は疑惑の釈明に追われ、「勝者はウォーレン氏」という評が米紙で支配的だった。
大統領選が本格化するのは来年2月以降。まだ民主党内の候補者争いの行方は見通せないが、トランプ大統領にしてみれば、ウォーレン氏の躍進は「待っていました」の展開だろう。
ウォーレン氏と言えば、米国では急進的と見られがちな国民皆保険制度の導入、ウォール街に厳しい「社会主義的政策」で知られるからだ。今後、トランプ大統領との一騎打ちになった場合、全米の平均的な有権者に彼女の急進的な訴えがどこまで受け入れられるかは甚だ疑問だ。
北朝鮮外交で妥協する可能性も? そのとき日本は?
下院は今後、弾劾調査を本格化させ、クリスマス前後に訴追決議案が採択され、来年早々にも上院で弾劾裁判が始まる見通しだ。このため、トランプ大統領は、裁判への対応に忙殺され、対外政策に時間と労力を割く余裕はなくなるだろう。かといって、「闇の国家」の官僚に丸投げするわけにはいかない。トランプ政権の外交・安保政策は当面、停滞すると見られる。
ただし、トランプ大統領肝煎りのプロジェクトは別だ。この点、日本にとって気になるのは、トランプ大統領が信頼する少数のアドバイザーと実務交渉者で担っている対北朝鮮外交の行方だ。国民の目を弾劾裁判からそらそうと、4回目の首脳会談を急遽開いて北朝鮮の中・短距離ミサイル問題などで妥協する可能性は捨て切れない。