谷中、立石、西荻窪…「ザ昭和」の街が消えるワケ 再開発でタワマンができればいいのか

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東京・谷中で「都市計画道路」の計画が見直され、規制が撤廃されることになる通り(筆者撮影)

東京オリンピックを前に首都圏では大規模開発が相次ぎ、都心部のみならず、住宅街を控えた駅前など、これまで低層の建物が主だったまちにも開発の波が押し寄せている。

その中には、谷中や西荻窪、京成立石などといった、昭和の街並みが人気を集める街も多数含まれている。防災面からすると建物、街の更新が必要なケースがあるのは理解できるが、この数の多さ、計画の均質さはどうしたわけだろう。背景を探った。

「都市計画道路」の建設か見直し

現在、都心以外で進められている開発計画の背景には2つの要因がある。1つは、市街地の道路条件改善などを目的とした「都市計画道路」だ。東京の計画道路は戦後すぐに復興を視野に計画決定されたものと、1966年に見直して計画決定されたものが大半。これに加えて、2012年以降策定された、木密地域の防災性向上を図る計画道路「特定整備路線」が28路線ある。これらの計画道路の建設、あるいは見直しがここへきて活発化しているのだ。

例えば、特定整備路補助第29号の拡幅が進む戸越公園駅周辺では、約150haに複数のプロジェクトが進んでおり、2018年12月には、そのうち一カ所で市街地再開発組合(品川区)の設立が認可された。細い通りに商店が密集していた地域に23階建てのタワーマンションが建設され、いずれ通り沿いの商店街はすべて消失する。鉄道の立体交差化の検討もあり、駅前でも再開発が行われる公算が高い。

戸越公園駅付近の商店街もいずれは消滅する(筆者撮影)

谷中もそうだ。2015年に計画道路の建設が見直され、廃止の方針が決定された。西日暮里駅から谷中銀座に向かう途中の、朝倉彫塑館前を通る観光客に人気の通りで、両側には寺社が多く、交通量はさほどでもない。そのためか、この通りは拡張が必要と判断されなかったわけだが、それに伴い、谷中地区では新たな都市計画が浮上している。

計画道路がある場合、沿道には高さ10m以下(3階以下)かつ地階を有しないことなどの規制が課されるが、計画が廃止されると適用されなくなる。高さや敷地面積の最低限度などの制限のない現状のままでは、無秩序な開発が懸念されるからである。

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