多世代が住む中野区の「コンパクトな街」の凄み 医療・介護との連携、多世代居住などを実現

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分譲マンションから見た「江古田の杜」の様子(筆者撮影)

都市開発の世界では今、「コンパクトシティ(タウン)」が重要なキーワードの1つとなっている。これは都市の中心部に行政や商業、住まい、医療、介護などの多様な機能を集中させる再開発手法のことだ。規模はさまざまだが、メリットとして人々の暮らしの利便性を高めるとともに、行政サービスなどの効率化、それによるコスト削減などが挙げられる。

国や地方自治体がこの開発手法に注目し、すでに全国各地で事業が展開されている。

福島県楢葉町で開発されていたコンパクトタウンの様子。災害公営住宅や診療所のほか、スーパー・飲食店などからなる商業ゾーン「ここなら笑店街」も配置されている(2018年4月、筆者撮影)

代表的なものとして、2007年に財政再建(再生)団体に指定された北海道夕張市の財政再建策にあたり、都市部の再開発手法として採り入れられている事例がある。

また、東日本大震災の発生にあたり津波や原発事故の被害を受けた自治体の中にも、この手法による街の再建が進められている事例がある。このケースでは、災害に強い安心・安全に関する街の機能向上も期待されていることの1つだ。

東京都中野区では…

コンパクトシティによる再開発事例は、人口減少や予算不足に悩む地方自治体にとどまらず、首都圏、東京23区でもみられる。例えば、東京都中野区。若者に人気の街とのイメージが強い一方、都会の自治体としての課題を抱えている。

中野区は若い単身転入者が多い一方、子育て世代の転出にも長年頭を悩ませてきた。彼らの転出が多いと、将来的に人口が定着せず、そのことが地域の衰退につながりかねないとの危機感を抱いている。

高齢化の波にももまれており、65歳以上の高齢人口が増加。構成比は2005年の18.6%から2014年には21.3%に上昇した。つまり、中野区の行政課題の1つに、子育て世代と高齢者の住環境を改善する必要があるという課題があったわけだ。

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