生みの親が明かす、新幹線「N700S」が極めた技術 外観の変化は少ないが、中身はパワーアップ

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JR東海の新型新幹線「N700S」(筆者撮影)

JR東海の新型新幹線「N700S」の試運転が続いている。その雄姿をカメラに収めるべく、鉄道写真家としては大忙しの日々が続く。試験走行の様子を撮影していると、搭載された新技術の裏側にどのような意図が隠されているのか知りたくなる。そこで、素朴な疑問を車両開発担当者にぶつけてみた。

2007年に登場した東海道新幹線のN700系は、名前こそ700系にNがついただけだが、性能面では明らかに新型車両だ。18年には新形式N700Sが登場、さらなる進化を遂げた。「S」は「最高」を意味するSupremeの頭文字。目指したのはあらゆる条件に適合する究極の「標準車両」だ。

床下機器を小型化

新幹線車両の海外展開にもN700Sが使える。「沿線人口などで適切な編成長は変わってくる。N700Sは編成長を6両や8両など、さまざまに調整できるようにした」。そう話すのはJR東海の上野雅之氏。新幹線鉄道事業本部の副本部長を務め、N700Sの父ともいえる存在だ。

例えば、台湾新幹線は12両編成だが、ベースとなった16両編成の700系から中間の4両を単に抜き取ったのではなく、12両化のための開発を行っている。外から見ていると中間の車両はどれも同じに思えるが、実は床下に搭載される機器がまったく異なる。

例えば主変圧器と主変換装置はどちらも巨大であり、別々の車両の床下に搭載されている。したがって、中間車両を単純に並べればいいというわけにはいかないのだ。

床下機器の中でもとくに重要かつ巨大な主変圧器と主変換装置をN700Aでは2両に分けて搭載していたが、機器の小型軽量化により、N700Sは主変圧器と主変換装置を1両に集約できた。「これが実現可能とわかったとき、鳥肌が立った」と、新幹線の父が興奮気味に語った。

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