セルフオーダーなら儲かると見る飲食店の盲点

注文の役割はメニューの「伝達」だけじゃない

人件費削減や、効率化のためだけにテクノロジーを導入すると、逆効果になりかねません。「合理化」ではなく、「高度化」が最終的な目的であることを、間違えないようにしてください。

外食業界だけではありません。この「高度化」という考え方は、さまざまな業種に活用できます。とくにIT化が遅れている業界は、この発想を取り入れることで、「自分たちが本来やるべきこと、やりたかったこと」に気づくことができるかもしれません。

「サービス」と「おもてなし」の違いとは

飲食店の仕事が感情労働に変化するということは、すなわち飲食店の仕事がよりクリエイティブになるということです。これまでの接客がマニュアル重視の「サービス」だとしたら、これからの接客は自分の頭で考える「おもてなし」の要素が増えていくのではないでしょうか。

おもてなしは、サービスよりもはるかに高度です。一人ひとり違うお客様を相手に、もっとも適切な対応を瞬時に判断し、実行しなければなりません。即興的かつ、柔軟な対応が求められるのです。

私は飲食店を経営していたとき、「おもてなし」に特化した研修を企画したことがあります。「おもてなし」こそが、これからの繁盛店において重要になると確信していたからです。

立ち居振る舞いから、華道、茶道まで多彩なカリキュラムをそろえ、接客業の基本動作や、おもてなしの心を養ってもらえる場をつくりました。この研修は社員だけではなく、アルバイトでも受講できるようにしました。

研修で大切にしていたのは、スタッフに「接客することの喜び」を感じてもらうことです。

お客様を感動させることができたとき、お客様が嬉しいのはもちろんですが、接客をしたスタッフもまた快感を得ています。この快感は、体験した人にしかわからないものです。

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人間は群れで生活しないと生きていけない動物です。だから、人を喜ばせることが快感になるように、遺伝子に組み込まれているのかもしれません。どんなに大変でも、どんなに報われなくても、この喜びを知ってしまうと、もう他の仕事はできなくなります。

やがて、「次はこうしてみよう」「こうしたらもっと喜んでもらえるのでは」と、接客を楽しみながら、自発的に考えるようになります。こうなればしめたものです。

どんどん自分で考えるようになりますし、プロとして急成長していきます。

単に料理や飲み物をお客様に運ぶ、「肉体労働」の時代はもうおしまいです。自分の頭で考えること、人を喜ばせること、それがこれからの「感情労働」の時代の接客において大切なのではないでしょうか。

(書き手:中村 仁/トレタ代表取締役)

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