独裁者たちが「デザイン」にこだわった理由 ヒトラーやムッソリーニ、毛沢東の手法とは

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ナチスは統一性、徹底性において印象を残すデザインを作っていた(写真:STaK/PIXTA)

人らデザインは使い方によって毒にも薬にもなる──。洗練されていたナチスのデザインを論じた『RED』、黒人、アジア人、ユダヤ人差別を目的とするヘイトポスターなどを取り上げた『HATE!』。今回は4人の独裁者とデザインの関係。洗脳など毒になるデザインを豊富な図版とともに扱った、評論3部作が完結した。『独裁者のデザイン ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法』を書いたデザインの歴史探偵の松田行正氏に聞いた。

「ナチス礼賛」ではない

──3部作の中での位置づけは?

「デザインの歴史探偵」を名乗る以上、ナチスは避けて通れなかったので『RED』ができた。執筆の過程で、ナチスの本質は「差別」と考えて著したのが『HATE!』。本書が『RED』の続編で、2冊目の『HATE!』が本流からのスピンオフという形です。

──帯に「デザインに罪はない」。

『RED』の構想はかなり前からあったのですが、デザインに絞るとはいえナチス礼賛と誤解されるおそれがあり、執筆がためらわれました。かなり表現に気を使って出版したところ、心配した反応もなく、やれやれ、と。ところが、ある大学の社会人講座で客観的なデザインの評価と銘打っているのに、事後アンケートの1枚に「ナチス礼賛のようだ」とびっしり書かれショックでした。今回は帯の惹句で「問題はデザインを使う側にある」と先手を打った(笑)。

──方法も変えましたね。

『RED』はナチスのデザインを正面から分析したが、本書ではデザイン的見地から、独裁政権のポスター、党章、建築、演説会場での演出にどういう意味が見いだせるかというアプローチに挑んだ。独裁者側の視点を強調するため、デザインの意味づけを分類した6つの章の名前すべてに「視線」を入れた。権力者の凝視をテーマにした「呪力のある視線」や未来や予言をイメージさせる「遠望する視線」といった具合です。

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