業界大手シェアオフィスで手を組む納得事情

単独では困難「空間データのハブ」狙う

複数の温度環境を実現する「ゾーニング空調」

また、「point 0 marunouchi」で最も人気になっているのが「Wind Creator」の前の席だ。実際に軽井沢の高原で計測したデータを基に、さわやかな風を再現するシステムで、まるで自然の中にいるような心地よさに包まれながら仕事ができるという。

「今夏は東京で猛暑日が続いたため、こうしたダイキンの空調専業企業らしいソリューションは大好評でした」と石原氏は振り返る。

オープンから3カ月。石原氏によると、利用登録者は1000人を超え、参画企業に対するフィードバックも数多く獲得できているという。

軽井沢の風や気温、湿度、香りを再現する「Wind Creator」。最も人気がある席だ

しかも、24時間営業であるにもかかわらず、夜の8時になるとほとんど人がいなくなる、ユニークな現象も起きているそうだ。理由は、アサヒビールが提供しているアルコールである。

「夕方6時ごろになると、どこからともなくオープンエリアに人が集まり、ビールを片手に談笑するひとときを過ごして、それぞれの家路に就く。アルコールが、仕事モードのスイッチの切り替えに役立っているのです。働き方改革で時間外労働をいかに減らすかで悩む企業も多いようですが、残業ゼロは夢ではないという可能性が示唆されました」と石原氏は話す。

だが、こうした先端技術を搭載したファシリティーの提供さえも、実は真の目的ではない。冒頭に述べたとおり、「point 0 marunouchi」は空間データベースプラットフォームの構築が第一義。IoT化された空間から得られる情報こそが、参画する協創企業が求める核心なのだ。

IoTゲートウェーとして、天井のエアコンの可能性は大

では、なぜ各社が空間データベースに注目し、協業することにしたのか。

「『クレスネクト』のリーダーシップをとるダイキンは、エアコンが、空間IoTネットワークのハブになると考えています。オフィスビルにおいて、エアコンは1室に1台以上あり、室内全体を見渡せる天井に設置されているからです。

エアコンにセンサーやカメラを組み込むことで、温度や湿度のほか、室内の明るさや音、人の数や位置、動き方など、空間と人にまつわるさまざまな情報を得ることができます。しかも天井は、電波を妨げる障害が少なく、IoTネットワークを構築するために必要なIoTゲートウェーとセンサーの通信状態を維持しやすいという利点もあります。

実際、「point 0 marunouchi」にも複数のセンサーが天井に設置されている

蓄積された空間データを分析すれば、オフィスでの生産性向上や健康維持に向けた画期的なサービスやビジネスソリューションを生み出すことができる。パナソニックをはじめ『point 0 marunouchi』プロジェクトに参画する大手各社が喉から手が出るほど欲しい高付加価値情報が詰まった、まさに『宝庫』なのです。

ただ、ダイキンも1社単独あるいはM&Aを通じてやれることには限界がある。そこで、パナソニックのような競合他社と手を組むことも辞さない姿勢で協業を進め、われわれだけではできない空間ソリューションを提供していきたいと考えています」と石原氏は説明する。

では、「クレスネクト」を活用すると、どんな世界が待っているのか。例えば、ある人があらかじめ好みの温度を登録しておき、位置情報と連動させれば、ダイキンの空調機を採用しているオフィスや出張先のホテルなど移動する先々で、その人にとっての快適なパーソナル空調を実現することが可能になる。

またオカムラがオフィス什器をIoTデバイスにして、空調機に仕込んだセンサー経由で従業員の働き方を分析すれば、ヘルスケア分野の新サービスを提供できるかもしれない。さらに、その分析データを基に、東京海上日動火災保険が新しい保険を設計することも可能になる。サービスやソリューションを提供する側も、提供される側も、互いにメリットを享受できる。それが「クレスネクト」の目指す未来だ。

オフィスはもとより、病院や高齢者施設、教育施設、商業ビルなど、あらゆる空間・空気の課題を解決し、次々と理想の快適空間が実現する日は一歩一歩近づいている。

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