「陰謀論を信じ込む人」の理解しがたい思考回路

自分の見える世界を見たい世界に塗り替える

一時的に楽しんで終わるならよいが、陰謀論を信じ込む人は、大地震やテロなどの大事件を、「すでに計画されたもの」と論じたがる傾向があるために、現実の世界ではもっといろんな出来事が複雑に絡み合い、予想できない結果が生まれることがあるということを無視しがちなところに問題がある。

思考は単純化し、脳はナマケモノになる

権威や権力を疑ってみる視点は必要だが、自分から見て大きな存在に映るものに対して、その背景に「なにかあるはずだ」と意図を過大に勘繰ろうとするクセがつくと、人は、複雑に考えて理解することを諦めるようになってしまう。

つまり、「どうせ裏で、自分の住む世界とはまるでスケールの違う強大な力が働いているんだ」というような思いからくる無力感や、現実に対する強い不確実さを伴ってしまい、物事を精細に捉えて考えたり、地道で面倒な批判作業をしたりする体力を失ってしまうのだ。長いものを嫌っていたはずが、注目しすぎてすっかり巻かれてしまい、服従したような状態とも言えるかもしれない。

こうなると、自分の見える世界を自分の視野の範囲だけで予測できる世界、つまり自分が見たい世界へと塗り替えてしまう。「あの権力!」なり「あの権威!」なり「あの大物!」なり、単純ではっきりとした敵を作ることで、なにもかもその敵まかせにして済ませてしまい、主体的な考えや決断、責任などを放棄した、ナマケモノになってしまうのだ。つじつまが合わなくてもお構いなしになるのは、ここにワケがあるのではないだろうか?

「地震兵器である証拠」を収集するパワーを、原発中心のエネルギー政策の転換について考えて、自分で意見を述べる方向に回せばどんなにか有意義だろうかと思う。

ボストンマラソンのテロ事件では、「過激派組織ではない人間がテロを起こすなんておかしい。あれはアメリカの謀略だ」という陰謀論を「それはありえるかも」と受け止めしまった私だったが、今考えれば、あれは「ホームグロウン・テロ(自国産テロ)」の象徴だと学ぶ機会でもあったと思う。

子ども時代に難民としてアメリカにやってきて、長年その地に暮らし、結婚もしてすっかり社会の一員と見られていた人物が、実は人知れず疎外感を募らせ、ある日突然テロリストになってしまうという出来事だったのだ。

かと言って、「陰謀なんて一切あるわけない」とも言えない。「トンキン湾事件」の話を聞けば、今年6月に起きたホルムズ海峡のタンカー攻撃事件や、つい最近のサウジアラビア石油施設攻撃事件については、眉をひそめてアメリカの動向を見張ることになる。終始、陰謀の世界観だけを信じようとする陰謀論者になってしまうと問題だが、陰謀は存在する場合もある。それほど現実は簡単に割り切れないということだ。

いま富は一部に集中し、人々は先の見えない不安や無力感、虚無感にさらされている。日々、驚愕するような事件や紛争のニュースばかりだ。スマホを手にしている自分は、なんだかすべてを「アップル」だの「グーグル」だの、なにか巨大なモノに操られているんじゃないかという気さえする。

もしかすると、誰もがいとも簡単に長いものに巻かれて、陰謀論者的な単純思考に走ってしまい、ナマケモノになりやすい時代と言えるのかもしれない。

事実や現実から遊離しないでいることは、かなり大変なことだ。自分の手綱をしっかり持ち続けることができるだろうか。

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