マック、吉野家、スタバ「軽減税率」をめぐる思惑 外食は多種多様な動き、実質値下げの企業も

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店内飲食の場合は税抜き319円+消費税10%、持ち帰りの場合は税抜き325円+消費税8%とし、実際に顧客が支払うのは、どちらも税込み350円となる。すき家のこの対応は店内飲食の場合、本体価格を実質6円値下げしたことになる。

それでも、「すき家の牛丼は350円で定着している」(広報担当者)ことから、350円を訴求して集客を優先する。逆に、牛丼(並盛)以外の一部メニューでは10円単位で値上げし、全体で利益を確保していく。

マクドナルドも「ビッグマック」などの主力商品を含む全体の7割のメニューで、実質値下げして税込み価格を維持する。100円(税込み)~のドリンクや500円(同)の「バリューセット」など、税込みでの価格が顧客になじんでいるものは増税分を飲み込み、税込み価格を維持する。他方、残りの3割の商品は値上げしてバランスを取る。「マックフライポテト(Mサイズ)」や「てりやきマックバーガー」は値上げになる。

ケンタッキーフライドチキンも同様に、税込み価格をそろえる。3月時点では本体価格をそろえる方針を示していたが一転、7月に税込み価格の統一へと判断を変えた。その理由は「店頭でのトラブル防止のため」(日本KFCホールディングス広報担当者)。

本体価格をそろえて持ち帰りのほうが安いと、持ち帰りで買ったのに席について食べる顧客が出てきかねない。その対応にスタッフが追われるような事態を避けた。また、表示がややこしくなることも懸念した。例えば「500円ランチ」などのセット販売の場合、「店内で召し上がる場合は509円です」といった煩雑な表示をしなければならない。

値下げに踏み切る大戸屋

勝負に出るのは、定食チェーンの大戸屋ごはん処。10月のメニュー改定に際し、全32品のうち4品を税込み価格維持と、実質値下げする。さらに、ほかの4品を税込みでも値下げする。

足元で苦戦が続く大戸屋。値下げで巻き返しを図れるか(記者撮影)

その結果、10月以降の大戸屋の客単価は約10円下がる見込みだ。大戸屋の既存店は4~8%の客数減が続いている。これを受け、運営会社である大戸屋ホールディングスの今2019年4~6月期業績は営業損失1.2億円となり、赤字に陥った(前年同期は2700万円の黒字)。「店舗運営コストは上昇しており、なかなか下げられない。メニュー改定で単価を下げ、来店の頻度を上げて業績を回復させたい」と、事業会社大戸屋の山本匡哉社長は話す。

だが、値下げした分を客数増でカバーするのは容易ではない。人件費などのコスト上昇分を吸収するとなると、ハードルはいっそう高い。業績が好転するかどうかの見通しは不透明だ。

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