サウジ攻撃、余波は原油価格急騰だけではない アラムコ上場は延期、遠のくサウジ経済改革

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ドローン攻撃を受けたのは、サウジ東部に位置するアブカイク、クライスの石油生産設備だ。特にアブカイクはサウジ最大の石油埋蔵量を誇るガワール油田から産出された原油の前処理を行っている。クライス油田もサウジ有数の油田の1つで、攻撃されたのはまさにサウジ原油生産拠点の中核といえる。

これだけ重要な石油生産設備への攻撃を許したことは世界中に衝撃を与えた。ある石油業界関係者は「サウジには防衛能力がないのではないかとマーケットは不安を感じている」と話す。というのは、これまでサウジの防衛体制は一定程度評価されていたからだ。

消えぬサウジの石油関連設備への脅威

実は、アブカイクが攻撃を受けるのはこれが初めてではない。2006年にもアルカイダによる自爆テロの標的となったが、設備が被害を受けるには至らなかった。しかし、今回は万全の警備体制を敷いているはずだった設備で大規模な被害を受けた。

今回はどこから攻撃が行われたのかなど、攻撃の実態はいまだによくわかっていない。14日の攻撃を行ったと宣言しているイエメンの武装組織「フーシ派」はサウジの石油関連設備への攻撃を継続する考えで、脅威が収まる気配は見えない。

サウジは同国南部に隣接するイエメンに2015年から武力介入している。イランに近いフーシ派がイエメン全土を掌握するのを阻止するためで、対するフーシ派もサウジに繰り返し反撃。2019年5月にはサウジの石油パイプライン設備、8月には同国のシェイバー油田への攻撃が行われた。

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