それでもまだ金価格が上昇するこれだけの理由 米中貿易戦争だけではここまで人気化しない

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世界経済の不透明さは消えず、長期的にも金価格を引き上げる要因は多い(写真:manoimage / PIXTA)

世界的な景気減速リスクが高まる中、NY金先物価格は一時1トロイオンス=1500ドル台を大きく超えるなど、年初来高値圏にあります(史上最高値は2011年9月につけた1923ドル)。気になるのは、今後も上昇するのか、それともここから下落に転じるのか、でしょう。直近のように、急ピッチな上昇による短期的な調整は今後も何度かあるものの、長期的にはさらに金価格が上昇する可能性が高いと考えます。その理由を見ていきたいと思います。

なぜいま、金が買われているのか?

そもそも足元で金が買われている主な要因は何なのでしょうか?主に3つの点が挙げられます。

1点目は、グローバル景気の減速感や、地政学的リスクの高まりなど不透明感が強まる中、リスク回避の動きとして安全資産への逃避先になっていることが挙げられます。一般的にリスクオフの動きが強まる場面では、債券では信用力の高いアメリカ国債、通貨では円やスイスフラン、商品・コモディティの分野では金などが「質への逃避」から選好されやすいと言われます。

現に、米中貿易摩擦、香港デモ、日韓対立など政治的・地理的に不透明感が強まっていることに加え、米2年債と10年債利回りの長短金利差が逆転する「逆イールド」が生じました。また、先行きの景気後退(リセッション)への懸念もみられる中では、株式のウェイトを減らし、こういった安全資産へ資金をシフトする動きが見られていると考えられます。

2点目は、米FRB(連邦準備制度理事会)による追加利下げが期待され、金へのシフトを促している可能性があります。基本的に金利上昇局面では配当や利子を生まない金の魅力は低下する一方、金利低下局面では、金の魅力が相対的に高まり、上昇する傾向が見られます。アメリカ経済の先行きリセッション(景気後退)懸念などからFRBが7月末の0.25%の利下げを皮切りに、9月以降も段階的に利下げを行うのではとの期待感も金需要を高めています。

3点目は、先行きのドル安の動きに備えた金によるヘッジの動きです。そもそも金は、米ドル建てで取引されているため、米ドル安になれば、金の価格が上がり、逆に米ドル高になれば、金の価格が下がる傾向にあります。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、来年の大統領選に向けた国内製造業への配慮とともに、景気の下支えとして今後ドル安政策を志向してくるのではとの見方も強く、金への選好を強める形となっています。

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