子どもの人生に影響大?「腸活」は早いほどいい

3歳までで大勢が決まる「腸内細菌」は一生もの

ハンドソープやウェットティッシュによく見られる「除菌」「殺菌」の文字。ところが、日常生活における除菌の徹底が、かえって子どもの健康に、さらには子どもが大人になってからの健康に、悪影響を与えるかもしれない。この背景には、ウイルスと細菌の混同がありそうだ。

除菌、殺菌グッズは、ウイルスには効かない

スーパーや雑貨店に行くとよくわかるが、近年ほとんどのハンドソープに「除菌」や「殺菌」などの表示が付いている。おそらく多くの人がこうした商品を好んで購入していることだろう。

ところが、「実は殺菌成分入りのハンドソープと、そうではないハンドソープでは、病気を予防する効果ではとくに差がないという実験結果も出ています」と指摘するのは、自らも小さな子どもを持つ昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤講師の森田麻里子氏だ。

昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤講師
森田麻里子医師
Child Health Laboratory代表。1児の母でもある

これは、2004年にアメリカのコロンビア大学で発表された研究※1だ。この研究チームは、238の一般家庭を2つのグループに分け、一方には殺菌成分入りのハンドソープや漂白剤の入った衣類用洗剤を使ってもらい、もう一方には殺菌成分の入っていないものを使ってもらった。そして48週間にわたり、せきや鼻水、喉の痛み、発熱、嘔吐、下痢などの感染症の症状があるかどうかを追跡すると、2つのグループで、それらの発生率に差は見られなかったのだ。森田氏は続ける。

「病気の予防というと、風邪やインフルエンザ、胃腸炎、ノロウイルスなどを指すことが一般的ですが、これらの主な原因は『細菌』ではなく『ウイルス』です。ところがハンドソープに配合されている成分は細菌を殺すためのもの。ですからウイルスに対する効果はないんです」(森田氏)

食中毒の原因の多くは細菌に由来するため、除菌・殺菌に意味がないとはいえないが、細菌とウイルスの違いは把握しておきたい。

そもそも細菌とウイルスはまったく別のものだ。細菌は自ら増殖できるのに対し、ウイルスは人などの細胞に入り込んで自分のコピーをつくらせることで増殖する。そして一般的な殺菌成分は、細菌の構造を利用して増殖を抑えるものであり、構造の違うウイルスには効かないのだ。

「また近年では、殺菌成分入りの商品を使うことで、抗菌薬に耐性を持った『耐性菌』を生むリスクがあることも指摘されています。ウイルスに効果がないばかりか、かえって耐性菌のリスクもあるのであれば、わざわざ使う必要はないと考えています。私の家では、殺菌作用のないせっけんを使っています」(森田氏)

>>>「人生を左右する『大腸劣化』と、その改善方法」はこちら

3歳までの菌との出会いが一生の健康を左右

さらには、行き過ぎた除菌や殺菌は、「腸活」の観点からも子どもの健康に悪影響を及ぼす可能性がある。それは、子どもの腸内細菌の形成方法にも関係してくる。

母親のおなかの中にいるとき、胎児の腸内は無菌状態だが、産道を通る際に母親の細菌を受け継ぐといわれている。さらに、母乳を摂取することで善玉菌であるビフィズス菌が増え、それによって腸内環境を整えているとされる。人間と細菌は生まれた直後から「共生関係」にあり、乳幼児期に出会う腸内細菌は「一生モノ」だと、森田氏は語る。

>>>「勘違いが起きやすいビフィズス菌」はこちら

森田氏によれば、「人の腸内フローラは、3歳くらいまでに大体の構成要素が固まる※2」という。腸内フローラについては未解明の部分が多いが、さまざまな研究の中で人間の健康に資するといわれているのは、細菌の「多様性」だ。

「どんな腸内細菌がいると人間の体にいいのかというところまではっきりとはわかっていませんが、腸内細菌の種類の多さ、要は『多様性』が健康には大切なようだということが明らかになってきています※3。さまざまな種類の菌がすむことで、特定の悪い菌ばかりになってしまうのが抑えられるようです」(森田氏)

楽しい“体験”が、多様な菌との出会いも生む

「もちろん、必要があって医師から処方された抗菌薬はきちんと飲み切る必要がありますし、菌が飛び回る不衛生的な環境で暮らすべきという話でもありません。ただ、最近の研究を踏まえれば、腸内フローラのベースがつくられる乳幼児期のうちに、できる範囲でさまざまな菌に触れさせるというのは、とても大切なことだと思います」(森田氏)

では、具体的にどんな方法がおすすめなのだろう。

「まずは、子どもをなるべく外で遊ばせて泥にも積極的に触れさせることです。そして手を洗う際は、普通のものを使う。きちんと洗えば、細菌やウイルスの多くを『物理的に』洗い落とせます。ただ、冬場に大流行するインフルエンザを予防したい場合には、ウイルスにも菌にも効果がある“アルコール”が入ったジェルやウェットティッシュを使うのがいいでしょう」(森田氏)

一方で、気になるのは食べ物。直接口から入れ、腸内へ入るものはどのようなものがいいのだろうか。

「食物繊維や発酵食品など、一般的に腸にいいとされるものは、子どもの腸にもいいと考えられます。子どもでも食べやすい発酵食品という点で、ヨーグルトは1つの選択肢ですね。うちの子どもにも食べさせています」(森田氏)

何より大切なのは、「子どもにいろいろな物事を体験させること」だと森田氏は話す。

「例えば、ふれあい広場のような場所で動物と触れ合ったり、山や川に行って自然に直接触れたり。そうやってさまざまな環境に身を置くことで貴重な経験が積めるのはもちろん、楽しみながら知らず知らずのうちに多様な細菌に触れ合うことになります」(森田氏)

実は大人だけでなく、子どもにとっても重要だった「腸活」。大腸は年齢とともに劣化していくことが指摘されているので、腸内フローラのベースをつくる乳幼児期こそ大事にすべきだろう。親子双方にとって無理のない範囲で、できる限りのことをしてあげたいものだ。

>>>「人生を左右する『大腸劣化』と、その改善方法」はこちら

お問い合わせ
森永乳業
関連ページ
人生を左右する「大腸劣化」と、その改善方法
連載トップページ
大腸のためにできること