先端を行く「AIコンサルティング」の可能性

「ソニーグループのDNA」SREホールディングス

左から、東京大学情報理工学系研究科 准教授 山﨑俊彦、SREホールディングス 執行役員 青木和大、SREホールディングス 取締役 角田智弘
2019年6月、ソニー不動産は社名を「SREホールディングス」に変更した。背景にあるのは、これまで事業の基盤となってきた不動産事業、ITプラットフォーム事業に加えて、AIソリューション事業が急速に伸びてきており、これら3つの事業が主軸となり、お互いに相乗効果を生んでいるという。ソニーグループの一員であるSREホールディングスが手掛けるAIソリューション事業とはどのようなものなのか、その前提として、今社会ではAIに対してどのような期待が込められているのか。ビッグデータ分析の第一人者である東京大学の山﨑俊彦准教授と、SREホールディングスのAIソリューション、ITプラットフォーム担当役員が互いの知見を交わした。

ソニーグループの一員としてAIを融合させた独自のサービスを提供

角田 ソニー不動産(現・SREホールディングス)は、2014年4月に創業者である西山(代表取締役社長 西山和良)が立ち上げた企業でしたが、設立当初からソニー本体とテクノロジー面で連携しながら独自のサービスを提供していました。AIを融合させたサービスもその一つです。

SREホールディングス株式会社
取締役
AIソリューション事業担当
角田 智弘

◇略歴◇
東京大学大学院修士課程(情報工学専攻)修了後、ソニー株式会社に入社。米スタンフォード大学CSLI客員研究員、豪ボンド大学修士課程(MBA)修了後、2014年10月にソニー不動産株式会社(現:SREホールディングス株式会社)に入社し、情報技術担当執行役員に就任。2018年、SREホールディングスの子会社SRE AI Partnersを設立し、取締役に就任。2019年SREホールディングス取締役に就任。現在に至る。

私は大学時代からAI(最適化理論)を専攻し、最適な意思決定を行うためには、どのような仕組みが必要なのかを研究してきました。その後、ソニーのR&D(研究開発)部門に在籍し、AIのうちでも、特に個人化(Personalization)領域の研究開発とそのサービス展開を行っていました。SREホールディングスに移った今も、AIの研究開発成果から新たな価値・新たなサービスを生み出す活動を続けています。

2018年にはこれまで培ってきたAI技術をさまざまな業界の企業に提供していくことを目的として子会社SRE AI Partnersも立ち上げました。

山﨑先生は「魅力」を定量化し解析するといった研究で、AIにも大変に注目していらっしゃると伺いました。AIに携わってきた者としてお会いできるのを楽しみにしておりました。

東京大学
情報理工学系研究科
電子情報学専攻
准教授
山﨑 俊彦

◇略歴◇
東京大学工学部電子工学科卒業。東京大学工学系研究科電子工学専攻修了。博士(工学)。学生時代は半導体物性を活かしたアナログVLSI研究に従事。現在、東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻准教授。魅力工学、大規模マルチメディアデータ処理、3次元映像処理、物体認識、機械学習などの研究を行っている。

山﨑 ありがとうございます。私の研究室では「魅力工学」と呼んでいます。例えば、人前でプレゼンテーション(プレゼン)をする際に、聞いている人の心に刺さるプレゼンと、刺さらないプレゼンの違いはどこにあるのか。またTVCMであれば、消費者の認知や購買意欲を高めるクリエイティブはどのようなものなのか。さらにSNSなら閲覧数を増やすハッシュタグとはどのようなものなのか、といったことを、ビッグデータを用いて解析しています。それぞれに高い相関性のある結果が出ています。

SREホールディングス株式会社
執行役員
ITプラットフォーム事業担当
企画マーケティング担当
青木 和大

◇略歴◇
日本ユニシス株式会社に入社後、大学院へ進学。修士課程(経営学)を修了後、株式会社リクルートに入社し、不動産メディア事業の戦略立案・推進、WEB集客の責任者などに従事。2015年、ソニー不動産株式会社(現:SREホールディングス株式会社)に入社し、マーケティングの責任者に就任。その後、2017年より、ヤフー社と共同で運営する「おうちダイレクト」の事業責任者を兼任。同年、執行役員に就任。現在に至る。

青木 AIやITの進化により、サービスを提供する側においても、生活者や消費者に対するアプローチが変化しつつあります。SREホールディングスは、2015年にヤフーとの共同事業「おうちダイレクト」をスタートさせました。当社のITプラットフォーム事業のきっかけとなるものです。

かつて不動産の売買情報が得られるメディアといえば、新聞やチラシ、住宅情報誌でした。インターネットの登場で利便性は高まりましたが、情報の非対称性がなくなったわけではありません。「おうちダイレクト」では、AIや不動産取引のデータ等を用いることにより、売主、買主、不動産会社のそれぞれに対して新たなサービスを提供しています。これにより、3者の間における情報の非対称性を、より一層少なくしていきたいと考えています。山﨑先生の研究により、物件の売買や賃貸情報の提供の手法も変わりそうですね。

山﨑 不動産を評価する際、「住みやすい家」とか「使いやすいキッチン」などと言いますが、定義はまちまちで、依然として建築家やデザイナーの匠(たくみ)の世界になっています。これを定量化することができれば、物件の差別化もできるし、より最適なレコメンドも可能になり、生活者が判断しやすくなります。

不動産の枠を超え多様な産業でAIを活用した価値創造を支援

青木 山﨑先生のお話のように、AIはパーソナライズされた最適なレコメンドを可能にすると期待されています。一方で、マーケティングにおいて購買意思決定プロセスのモデルが複数存在することからも分かるように、消費者にはいくつかの選択肢を検討した上で買いたいという潜在的な心理があり、その心理の強さは商材によって異なります。住宅やクルマなど高額な商材については、「情報収集→検討→情報収集」のステップをいったりきたりするため期間が非常に長い、という調査結果が出ています。日本国内における住宅のポータルサイトはドリルダウン(掘り下げ)型の構造がセオリーになっていますが、これは購入検討者が試行錯誤しやすい構造になっているからでしょう。私はこのあたりも変えていきたいと思っています。

山﨑 おっしゃるように、消費者には、効率よく答えを見つけたいという思いの一方で、「迷いたい」という心理もあります。その時、背中を押してあげるような「理由」があるといいと思っています。「あなたはこういう点を重視していますよね、だからこの物件がお勧めですよ」と言われれば納得感があります。

角田 私たちが目指していることも、山﨑先生のお話に通じるものがあります。私は、ソニーにおいて、個人化(Personalization)、特に、テレビ番組や音楽、ゲームなどのエンターテイメントコンテンツを、消費者の行動履歴や好みに合わせレコメンドをするシステムの開発を行ってきましたが、その際にレコメンド理由を提示するシステムの開発も行ってきました。これは、昨今のWhite box AI(なぜそのような結果になるのか理由を明確にするAI)につながるものであり、まさに山﨑先生がおっしゃっている納得感を実現する上で、「理由」という要素は、AIにとって非常に重要であると考えております。

ソニーはこういったAIに関する先端的な研究開発を長年行っており、最近ではDeep Learningのコアフレームワークを外部に提供するほどの高い技術力を有しております。日本ではソニーとPreferred Networksの2社のみがコアフレームワークの外部提供をしております。SREホールディングスは、ソニー本体と連携をしながら、Deep Learningをはじめとした最先端のAI技術を用い、不動産分野、さらには、金融、インフラ、リテールなどのさまざまな産業分野へのAI応用を拡大しております。

青木 ITプラットフォームの存在価値は、AI等の新しい技術やインターネットなどを活用しながら、情報の出し手と受け手を結ぶよりよいサービスを提供することだと思っています。ただし、新たなテクノロジーを活用することは手段ではあって目的ではありません。お子さんからお年寄りまで、テクノロジーを意識しないで使えるサービスであることが大切だと感じています。

山﨑 それは大切ですね。AIが注目されていますが、AIも目的ではありません。実は私も「AIに詳しいですね」とよく言われるのですが、自分ではそう思っていないのです。「人を惹きつける魅力とは何か」と考え、データを解析するためにAIを使っていたら、自然とこうなっていたというのが正直なところです。

角田 まさにAIは目的ではなく、いかに顧客価値が高いサービスを提供できるかが重要だと感じています。その観点では、顧客に近いデバイス側で、プライバシーに配慮した上で瞬時に応答を返してくれるようなサービスが広がっていくと考えています。技術的には、現在はビッグデータを核としたAIaaS(AI as a Service)型でDeep Learningを中心としたAI技術の展開をしていますが、今後は、センサー情報なども活用したデバイス側でのエッジAIにシフトしていくことを見据えています。

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