ウィーワーク「シェアオフィス」黒字化へ遠い道 債務超過脱せず、大企業「法人会員」に熱視線

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「われわれはまだ始まったばかりだ」

ウィーカンパニーは、赤字の理由を成長のための新規出店にかかる費用が先行しているためだと強調する。オフィス開業には内装工事費や広告宣伝費がかさむうえ、開業時のシェアオフィスの稼働率は52%にとどまる(2018年実績)。一般的なオフィスビルなら損益分岐点を下回りかねない数字だ。

それでも、6カ月が経過すると稼働率は84%にまで上昇し、損益分岐点を超え、開業から2年後には安定的に収益を生み出すようになるという。ただ、黒字化した拠点は今年6月時点で全体の3割にとどまり、残る7割は開業からまだ日が浅く、十分な収益がまだ生み出せていないようだ。

2018年は、売上高から施設運営にかかる費用と販売管理費を差し引いただけで1.6億ドルの赤字。出店にかかる先行投資負担が軽くなっても、黒字転換への道のりは険しい。債務超過状態が続く中、現状はソフトバンクなど投資家からの出資で補填しているのが実態だ。

レンタルオフィスとウィーワークは競合しない

ウィーワークをはじめとするシェアオフィスには一般的に、決められたフロアのどこに座ってもいい「コワーキングスペース」と、一区画ごとを貸し出す「占有スペース」の2種類がある。このうち、収益が出ているのは後者だ。

今年4月に貸会議室大手のTKPが日本法人を買収したレンタルオフィス「リージャス」はその典型だ。一部のコワーキングスペースを除けば、フロアの大部分は1~数人用の占有スペースで占められている。場所にもよるが、都心部のとある拠点の月額料金は坪単価で約7万円と、周辺相場の2倍かかる。それでも、入居工事や原状回復、保証金といった初期費用が抑えられることが評価され、ほぼ満室稼働だという。

ベンチャー企業向けオフィスの印象が強いが、自治体や大企業への営業も力を入れている(撮影:今井康一)

TKPの河野貴輝社長は、「リージャスとウィーワークは競合しない」と言い切る。リージャスの運営母体であるIWGの2018年12月期決算は、売上高約25億イギリスポンド(約3250億円)に対して営業利益は約1.5億ポンド(約195億円)だった。

【2019年8月26日12時11分注記】初出時の記事でリージャスの運営母体を「IWP」としていましたが、表記のように修正いたします。

他方、ブランド名であるウィーワークよろしく、他人と同じ空間で仕事をするコワーキングスペースには、原価管理が難しいという難点がある。「席が6割以上埋まってくると、混雑しているという印象を与え、会員の満足度が下がる。そのため会員数は席数の3倍程度が限界だ」(都内でシェアオフィスを展開するデベロッパー幹部)と言う。

ちなみに、このデベロッパーはある拠点で席数の5倍の会員を集めたところ、「いつ来ても埋まっていて仕事ができない」などというクレームを受けた。目論見書の中で、ウィーカンパニー会員数の増加を成長の証左としているが、やみくもに会員数だけを追えば満足度の低下につながりかねない。

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