寿命をも左右する「ペット食」の知られざる実際 獣医師がネスレに転職して働く深いワケ

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記者の素朴な疑問にパッと明快に答えてくれる中塚一将さん(撮影:梅谷秀司)

――逆に、ドライフードのあげすぎは危険ですか?

ドライフードは保存が利くというメリットがあります。とくに猫の場合、ちびちび食べてはどこかへ行って、食べては行ってを繰り返すので、食事に時間がかかります。ウェットフードは水分が多くカビが生えやすいので、時間が経つとよくありません。ドライフードではそういう心配があまりないので、飼い主さんのライフスタイルに合わせた調整ができます。置いたまま出かけるなら、ドライフードのほうがいいです。

――手作り食も流行していますよね。注意することはありますか?

手作り食は栄養管理が難しいです。日本だと10年くらい前から増えてきていますが、全体で見ると手作り食をしている方はごく一部だと思います。おそらく一般の飼い主さんでは、かなり難しいだろうと思われるくらいの細かな設計が必要になります。

人間ならば感覚的に何をどれくらい食べたらいいかがわかりますが、動物は違います。犬は、人と比較すると炭水化物の必要量は少ない、その代わり脂肪やタンパク質が多く必要です。人と同じ感覚で作ってしまうと、どうしてもズレが出てきます。

肥満は病気や寿命に直結

――ペットの肥満は、危険ですか?

これは明確に危険といえます。20年前に行われた研究データがあります。同じ母犬から生まれてきたラブラドールの双子を、24組48頭集め、一生涯飼育して観察しました。双子の犬たちは、運動量など飼育環境は同じです。唯一変えたのがフードをあげる量です。

14年ほど追跡調査した結果、太っている犬は、理想的な体形の犬に比べて、寿命が2歳ぐらい短くなりました。2歳というのは人に換算すると10歳です。また関節炎など、病気の発症年齢も、太っているほうが高くなる傾向がありました。病気や寿命に、肥満は直結します。

――高齢犬・高齢猫の食事で気をつけたいことは?

年を取ってくると歯が悪くなるなどで、うまくかめなくなるケースがあります。そういう場合は、普段使っているドライフードをぬるま湯でふやかしてあげると食べやすくなります。ウェットフードの利用を考えてもいいですね。あと高齢犬や高齢猫でよくあるのが、食欲がなくなってきたと思っていたら、実は病気が潜んでいたというケースです。ですので、もし気になるところがあったら、1回病院に行ってもらってもいいかなと思います。

――安いペットフードはダメでしょうか?

安い物がダメということはありません。ただ安いフードは、タンパク質が比較的低い傾向があります。タンパク質の原材料は、お肉など値段が高い食材が使われるケースが多いので。それでも一概には言えなくて、パッケージをしっかり見ると「このフードは値段の割にいい素材を使ってるな」とか、「いい栄養の含有量をしているな」というのがわかるようになります。

次ページパッケージで見てほしいのは…
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