「ありがとう」と言える上司が得する科学的根拠 職場で「権威を振りかざす人」は出世できない

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礼節ある人は出世が早く、仕事で優れた業績をあげる可能性が高い。本当だろうか、と疑う人もいるだろうが、間違いなくそうだと断言できる。いくつか例を紹介しよう。

礼節ある人は採用されやすい

① 声がかかりやすい

まず言えるのは、礼節ある人には、「声がかかりやすい」ということである。何かを一緒にやろうと誘われる機会が多い。

考えてみてほしい。あなたが仕事中、同僚に何か手伝ってもらう必要が生じたとき、声をかけるのはどういう人だろうか。いつも親切で愛想のいい人だろうか。それとも、より有能だが、態度が大きくて無礼な人だろうか。

こう尋ねると、多くの人が「それはもちろん有能な人だ。仕事なのだから大事なのは能力だ」と答える。しかし、実際の行動は言葉とは違うことがわかっている。

職場での人間関係について1万人以上を対象に行われたアンケート調査ではこういう結果が出た。

協力を頼む同僚を選ぶ時は、自らに「この人と働くと楽しいだろうか」と問いかける人のほうが、「この人は、手伝ってもらう仕事に詳しいだろうか」と問いかける人よりも多い。

つまり、他人に優しく接している人、気分のいい接し方をしている人のほうが、声がかかりやすいということだ。人に何かを頼まれる機会が多ければ、能力を証明する機会も多くなるし、いい評判も広まりやすくなる。そしてますます、選ばれる機会が増えていく。

こうして、「能力はあるけれど無礼な人」との差は時間が経つごとに開いていく。

私の知る限りでは、法律事務所や医療機関でもやはり同じらしい。上席弁護士や医師を採用する際には、同様のことが起きる。長期間ともに働き、重要な職務を担ってもらう人を雇う際には、たとえ能力はあっても無礼な人は避けたいと考えるようだ。

その人が重要であるほど、礼節を重視する傾向は強まる。

何度かの合併を繰り返したあるコンサルティング会社でも、礼節ある人を長く雇用し、昇進もさせているという。とくに合併により、多様な人々がともに働く状況になったことから、その中でも皆とうまく関わることができ、種類の違う人とでも垣根なくコミュニケーションできる人が求められるようになった。

他人との関わりに問題がある人や、他人への親切心、尊敬がないと思われる人は、雇いたがらないということだ。

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