それでも「日経平均は7月以降急落」と見る理由 「虫の良すぎる市場」はいずれ修正を迫られる

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日本を含めて世界の経済指標は悪化しているが、アメリカの株価は最高値圏。どう見ればいいのだろうか(写真:G-item / PIXTA)

このごろは毎回当コラムを寄稿するたびに、主要国の多くの経済指標が一段と悪化していることを実感する。

特に足元の企業心理は、ほぼ暗くなる一方だ。それは日本の日銀短観業況判断、ドイツのIFO指数、アメリカのISM指数などの低下に見いだせる。先週公表された、アメリカの企業心理に関するデータでは、17日(月)発表のニューヨーク連銀製造業景況指数は5月の17.8から6月は-8.6に、20日(木)発表のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は同じく16.6から0.3に、大きく悪化した。

世界的な不透明感、在庫積み上がる日本企業

世界の政治情勢も経済状況も、極めて不透明感が強く、企業として投資や生産、人員採用などの計画を立てにくい。たとえばブレグジット(英国のEU離脱)については、今のところテリーザ・メイ首相の後任選びである保守党党首選では、ボリス・ジョンソン元外相が優勢だと伝えられている。彼は「合意なき離脱」でも構わないとする、離脱強硬派だ。

市場は、「ブレクジットがうまくいかないことはすでに織り込み済みだ」と軽視しているが、企業としては欧州における行動で積極的に動きにくい。こうした例も含めて、企業の設備投資、建設投資などは、今後一段の委縮が懸念される。

日本経済も、製造業については「生産が落ち込んでいながら、なおかつ在庫が積み上がる」、つまり生産の落ち込み以上に出荷(需要)が減少しているという、極めて厳しい状態にある。この一因としては、輸出向け製品の需要が減退しているという面が大きいと考えているが、やはり先週発表された経済指標のなかでは、19日(水)に発表された5月の貿易統計をみると、輸出金額は6カ月連続の、輸出数量は7カ月連続の、前年比マイナスを記録した。

地域別には、このところ中国を含むアジア向けの輸出の減退が大きい。このため、「日本からの輸出減少の『悪役』は中国だけであり、中国経済はこれからの大規模な経済対策の効果で立ち直るのだから、心配は何もない」という楽観論を耳にする。

市場における楽観論だけではない。日本政府の月例経済報告も、日銀の展望レポートも、世界経済についての基本認識は、「リスクは多くあるものの、中国が経済対策を打つから回復が期待される」といったものだ。そうした楽観的な認識を基に、消費増税を含む経済政策が推進されるのだから、困ったものではあるが。

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