「異色のNHK番組」がハイエクに注目した理由 「歴史上の知の巨人」の視点から見る資本主義

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仮想通貨、キャッシュレスの時代に、資本主義とは、貨幣とは何かを改めて問うていきます(写真:metamorworks/iStock)  
巨大化するGAFAへの懸念、そして仮想通貨への期待と不安が交錯する今、資本主義の行きつく先はどこなのか?
「市場」「自由」「個人主義」をキーワードに、多角的な視点から社会のあり方を再考した異色のNHK経済教養ドキュメント「欲望の資本主義2019」が『欲望の資本主義3:偽りの個人主義を越えて』(東洋経済新報社)として書籍化された。
欲望の資本主義2:闇の力が目覚める時』ではマルクスを取り上げたが、今回の『欲望の資本主義3:偽りの個人主義を越えて』では、「新自由主義」の理論的支柱ともされてきたフリードリヒ・ハイエクに光を当てている。番組を企画したNHKエンタープライズ番組開発エグゼクティブ・プロデューサーの丸山俊一氏にその意図を聞いた。
また、仮想通貨が生まれ、キャッシュレス化が進む現象を捉え、資本主義の基本を成す貨幣に着目したスピンオフ番組(7月14日(日)夜10時より放送・NHK-BS1スペシャル「欲望の資本主義 特別編 欲望の貨幣論2019」)の見どころもお届けする。

知の巨人たちの言説のリレー

――今回の『欲望の資本主義3:偽りの個人主義を越えて』は、GAFAや仮想通貨をテーマに資本主義を考える内容ですね。

『欲望の資本主義3:偽りの個人主義を越えて』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

丸山俊一(以下、丸山):GAFA、仮想通貨、信用経済……、テクノロジーが可能にしようとしている新たな資本主義の中で僕らはどんなスタンスをとるべきか? そしてどう考えるべきか?

新春に放送したBS1スペシャル「欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を越えて~」に登場した皆さんから、スコット・ギャロウェイ、チャールズ・ホスキンソン、ジャン・ティロール、ユヴァル・ノア・ハラリ、マルクス・ガブリエルの5人をピックアップし、番組には盛り込みきれなかった言葉を所収しています。

まず、GAFAが席巻する現状へのギャロウェイによる分析、批判から始まった問題提起は、その打開策には仮想通貨こそが有効だという、仮想通貨開発者であるホスキンソンのある種の革命的な主張による解決策の提案へと続きます。

すると、それに対し次なる重鎮、ノーベル経済学賞受賞のティロールが、その実現性に対して論理的な見解を提示し冷や水を浴びせ、「市場の失敗」を国家による修正に託す道を説くわけです。

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