老後資金「2000万円騒動」の本質は何なのか

年金改革先送りは形を変えた「利益誘導策」だ

しかし、おかしな話である。そもそも公的年金制度は高齢者の生活に必要なお金を100%賄うという設計にはなっていない。ところが自民党の反応を見ていると、政府が何もかもすべて面倒を見るという、できもしないストーリーを国民に信じ込ませたいのだろうかとさえ思えてくる。

急速に進む高齢化社会を前に、年金、医療、介護などの社会保障制度が安定的で維持可能なものになるよう抜本的な制度改革の必要性が言われて久しいが、遅々として進まない。わかってはいるのだが、政府も与野党も積極的に改革に取り組もうとはしない。

その理由は明らかだ。今、政府がとりうる社会保障制度改革は、高齢者の負担を増やすか、政府の提供するサービスを減らす以外の道はない。そんなことをすれば、高齢者のみならず年金生活予備軍の50代後半以降の世代からも反発を買いかねない。ゆえに痛みを伴う改革には触れたくない、あるいはできるだけ遅らせたい。これは形を変えた現代版「利益誘導政策」である。

バブル崩壊で利益誘導は不可能になった

そもそも自民党は1955年の結党以来、利益誘導を武器に政権を維持してきたと言ってもいい政党だ。高度経済成長初期の時代には、田中角栄氏に象徴されるように日本中に新幹線や高速道路を造ったり、さまざまな公共事業を行うことで有権者の支持を獲得、維持してきた。

自民党を支持する医師会や建設業界、農協などの業界団体が集票力を増すと、業界団体と自民党と官僚組織が強く結びついた「政官業の鉄の三角形」と呼ばれる政権維持の仕組みが確立され、予算や補助金を業界に流すことで強固な権力基盤を構築した。

こうした利益誘導による権力維持を可能にしたのが経済成長だった。経済が成長することで税収が入り、それを原資に予算を増やし続けることで、支持団体への利益誘導が可能になったのだ。

ところが1990年代初めのバブル経済崩壊で、この仕組みが維持困難になってくる。経済成長が止まり、かつてのような税収増がなくなってしまった。しかし、その後も自民党政権は予算を増やし続けてきた。足らざる財源を赤字国債で賄ってきたことは言うまでもない。

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