老後に本当に必要な金額は一体いくらなのか? 何とも奇妙な「老後2000万円報告書」問題

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山崎元氏は「老後2000万円報告書」は麻生大臣の無能と非礼が招いたと手厳しい。では老後に本当に必要な金額は? 実は、誰でも3分あれば計算できるのだ(写真:zak/PIXTA)

いわゆる“炎上”状態となった「老後2000万円報告書」問題は、極めて奇妙な展開だと言うしかない。

麻生大臣の無能と非礼が招いた「実に下らない事態」

もともと、金融審議会の市場ワーキング・グループがまとめた「高齢社会における資産形成・管理」と題する報告書(6月3日付)が、「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿」で見た支出を基に、95歳までの30年間の老後を想定すると、生活費の取り崩しとして必要な金額が約2000万円だとの試算を示しただけのことだった。

これに対して「公的年金への不安を煽る」とか、まして「年金制度は崩壊しているのでまず謝れ」、といった野党の批判はまったくピント外れの言いがかりに近いものだったのだが、何と麻生太郎大臣(金融担当)が、適切に説明せずに、「表現が不適切だった」と認めてしまった。報告書の文章を起草した担当者にも、これを審議して了承した有識者たちにも何とも失礼な話だった。

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麻生大臣の非礼はさらに続き、ついには報告書を正式なものとしては受け取らないと言い出した。政府の方針と異なるからという理由を挙げているようだが、政府の方針どおりの内容でないと受け取らないというのでは、審議会など開く意味がない。もともと政府が専門家・有識者に検討を依頼している立場なのだから、報告書を受け取ったうえで、反論があれば丁寧に意見を述べるのが、大臣の役割だろう。

そもそも「2000万円」は一定の仮定に基づく1つの試算にすぎず、老後に必要な額は家計によってさまざまであり、公的年金は一定の役割を今後も果たすことを丁寧に説明すれば、どうということはなかったはずだ。

今回の“炎上”は、麻生大臣の無能と非礼が招いた実に下らない事態だというしかない。

それでは、老後の生活に備えていったいいくら必要なのだろうか? 報告書は平均的な支出のケースで試算を示したが、世の中には、高所得・高支出な家計もあれば、低所得・低支出な家計もある。それぞれ、家計の事情に応じて、現役時代の収入を、「現在の支出」と「将来の支出」に振り分けなければならないので、問題の質は同じだ。

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