「戦争論」をあえてビジネス書として読む効用

ビジネス戦略での防御・集中・天才の本質

第一に、戦争の本質は原始的な強力行為にあり、この強力行為は、殆んど盲目的な自然的本能とさえ言えるほどの憎悪と敵意を伴っている、ということである。第二に、戦争は確からしさと偶然の糾う(あざなう)博戯であり、またこのような性質が戦争を将師の自由な心的活動たらしめる、ということである。第三に、戦争は政治の道具であるという従属的性質を帯びるものであるが、しかしまたかかる性質によって戦争は、もっぱら打算を事とする知力の仕事になる、ということである(岩波文庫版上巻 P62)

こうクラウゼヴィッツは説明し、第一が国民に帰するとした。戦争の燃え上がる激情が国民の心に内在し戦争に賛成しているか。次の第二は軍に帰するもので、偶然を伴う領域で勇敢に知性をもって戦えるか。そして第三は政府の本務とし、政治的目的の定立を説いた。

『戦争論』で知るべきは「防御」「集中」「天才」

クラウゼヴィッツが指摘したポイントとして、三つを知っておけばいい。それは、防御と集中と天才だ。

■防御について
一般に防御は攻撃よりも強力でありかかる事情が両極性のはたらきをしばしば消滅させる、また軍事的行動に停止状態の生じる理由もこれによってよく説明されるのである(中略)我々の確信するところでは、(正しい意味の)防御は攻撃よりも著しく強力であり、しかも我々がかいなでに想像するよりも遥かに強力なのである(岩波文庫版上巻 P51)
■集中について
兵数が敵方よりも優勢であるということは、戦術においても戦略においても、勝利の最も一般的な原理である。(中略)決定的な地点においては、できるだけ多数の軍隊を戦闘に参加せしめねばならない、ということである。現代のヨーロッパでは、いかに才能のすぐれた将師でも、二倍の兵力を有する敵と対抗して勝利を得ることは極めて困難である。(岩波文庫版上巻 P288、P290、P292)
■天才について
何か独特の行動が一種独特の熟練をもって遂行されるとすれば、そこには知性と情意との独特の素質が無ければならない。そしてかかる知性と情意とが衆にぬきんで、また異常な業績によって顕示されるならば、この両つの心力を併せ有する精神は天才と名づけられてよい。
(中略)戦争は危険を本領とする、従って何ものにも増して軍人の第一の特性は勇気である。
(中略)戦争においては、一方では情報や予測がすべて不確実であり、また他方では偶然が不断に介入する。
(中略)未だ曽て予期したことのないようなものとの不断の闘争によく堪えねばならないとすれば、何よりもまず二個の特性を欠くことができない。その第一は、このような甚だしく不分明な事態のなかにあっても、真実を証破するだけの光りをはつかながらも保有しているような知性である、また、第二は、このともしい光りに頼って行動するところの勇気である。(岩波文庫版上巻 P88、P90、P92、P93)>
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