新幹線N700S「時速360km」が導く鉄道新時代 高速鉄道は再びスピード競争の時代に?

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時速360kmでの走行試験を行ったN700S(撮影:尾形文繁)

時速360km走行によって、東京ー新大阪間の所要時間短縮の可能性も出てきた。だが、現在のところ東海道新幹線の最高時速を285kmから引き上げる計画はない。

では、東海道新幹線と直通する山陽新幹線はどうか。山陽新幹線の最高時速は300kmだ。はたしてスピードアップはあり得るか。

残念ながら、JR西日本の来島達夫社長は、「時速300kmを超えると環境上の問題が出てくる。山陽区間の最高速度を引き上げる計画は今のところない」と話す。そうなってくると、当面は日本国内においてN700Sが時速360kmで営業運転する機会はなさそうだ。

テキサス新幹線でも難しい?

海外はどうだろうか。今から約10年前の2009年11月16日の深夜には、N700系の先行試作車を改良した8両編成の国際仕様「N700-I Bullet」が、やはり米原―京都間の下り線で高速走行試験を実施し、時速330kmでの走行を行った。

2009年11月16日の深夜にはN700-Iが時速330km走行に成功(記者撮影)

この車両は海外に新幹線を売り込むべく開発されたもので、列車にはテキサス高速鉄道交通協会のロバート・エルクス会長が試乗し、「非常にスムーズ。すぐに時速330kmに到達し、乗り心地もよかった」と絶賛。その後、テキサス州のダラス―ヒューストン間の高速鉄道計画には東海道新幹線方式が採用され、JR東海も技術支援を行うことが決まっている。

テキサスの高速鉄道計画はN700系国際仕様の導入を前提に策定されているため、同区間の最高速度は時速200マイル(約330km)ということになる。では時速360km運転がテキサスでできるかというと、時速330kmと時速360kmでは、騒音や振動など周囲の環境に与える影響の度合いも変わってくる。テキサスで時速330kmでの走行を前提とした環境影響評価が行われているとしたら、簡単に時速360kmに引き上げるというわけにはいかないだろう。

次ページ予定はなくても「高い走行性能を示す」狙い
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