本屋大賞候補コピーに採用されたみそ屋の熱意

独自ランキングで選定、出版社からオファー

『さざなみのよる』の帯紙に記載された「みそ屋大賞受賞」の文字(右)。裏面(左)には従業員の感想も=福井県福井市の米五(写真:福井新聞)

全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ「本屋大賞」で今年6位に入った木皿泉さんの『さざなみのよる』(河出書房新社)の帯紙に、福井県福井市の老舗みそ製造販売店「米五」による「みそ屋大賞」のコピーが記された。会社ぐるみで読書を楽しむ取り組みが作家や出版社の心を動かし、PRに一役買う形になった。

米五は、感性を磨く社員教育の一環として2014年に「みそ屋大賞」を創設。“本家”の本屋大賞のノミネート作品から独自に1位を決め、勝手に表彰を続けている。

出版不況の中で“みそ屋大賞効果”に期待

6回目となった今年は多田和博社長(62)と、全従業員の計14人が選考。ノミネート10作品の評価を点数化し、「いちばん味わい深い本」として大賞に『さざなみのよる』を選んだ。

出版元を通して木皿さんに盾と自社商品、従業員の感想文を贈ったところ、サイン本とともに「この度(たび)は思いがけず賞をいただきとてもうれしかった。お金にかえられない仕事でお返しできたら」とのメッセージが届いた。その後、河出書房新社から依頼があり、重版分の新たな帯紙に「みそ屋大賞」のコピーが使われることになった。

帯紙の前面には「福井県のみそ屋『米五』が選ぶみそ屋大賞受賞」とデザインされ、裏には「誰かの人生に何かしら残せる人になりたいと強く思った」「人目をはばからず涙した」など従業員4人のコメントも紹介されている。

多田社長は「遊び心で始めた社内の活動が、権威ある賞のように紹介されるなんて信じられない」と喜び、コメントが採用された横濱友梨さん(25)=福井市=は「すごいことで実感がない。読書を通して登場人物の心情を深く考えるようになった」と話す。

出版不況の中で『さざなみのよる』は2018年の初版以降、10万部を突破した。河出書房新社の担当者は「木皿作品は波紋のようにじわじわと広がっており、米五の皆さんの心にも届いたことが本当にうれしい」と話し、「血が通った温かいコメントは、作家が作品に込めた思いと合致する。この帯紙から、多くの読者に作品の魅力が伝わってほしい」と“みそ屋大賞効果”に期待を寄せる。

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