「絶対にだまされない」と過信する人の落とし穴

実はその根拠のない「過信」こそが危ない

5. 物理的に、けっこう「ひとり」

そもそも現代は、核家族化が進んで親子別居が多く、すぐにコミュニケーションのとれる人、相談できる人が減っており、人が「ひとり」になりやすいという社会環境にある。これは、詐欺師にとって有利にはたらいてしまう。「オレオレ詐欺」が急増し、広く知られ始めたのは2003年頃だが、これは高齢者の独居が増加しはじめた時期でもあるのだ。その後、独居老人数に比例して、被害件数も右肩上がりである。

さらに今は、家族といても自室でパソコンに向かっていたり、大勢の中にいてもスマホの中にのめり込んでいたり、「常にひとり」の状況が作り出されている。そこに忍び寄るのが、ワンクリック詐欺やフィッシング、架空請求詐欺などだ。BBソフトサービスのセキュリティソフト「Internet SagiWall™」で検知したデータを基にした「インターネット詐欺リポート(2016年8月度調査)」によれば、ネット上で何らかの詐欺被害にあった人の約7割がスマホを使っていたことが判明している。

自分の中の心の隙や恥の部分を認識する勇気も必要

6. “後ろめたさ”が勝る状況は危険

「インターネット詐欺リポート」には、興味深い調査結果がある。ネット詐欺にあった際、「家族や知人に相談した」のはわずか4%、「第三者機関に相談した」という人も6%にすぎないのだ。

被害にあっても「問い合わせも相談もしなかった(37%)」、次に多いのが「メールでサイトの運営者に問い合わせた(18%)」。誰にも相談しなかった理由は、「色々聞かれるのが面倒(47.8%)」「家族や知人に知られたくない(20.9%)」となっている。

これは、多くのインターネット詐欺が、アダルトサイトや出会い系サイトなどを覗き見ている最中に起きることに起因しているだろう。プライベートの塊であるスマホを手にして、こっそりとエッチな動画を見ようとしたら、突然「ご入会ありがとうございます」という画面が出て、IPアドレスなどが表示され、高額の料金請求を突きつけられる。この後ろめたすぎる場面で、まず人に相談しようと考える人は少ない。自力でなんとか解決しようとして、メールで詐欺サイトにコンタクトをとってしまうことにより、さらなる被害に巻き込まれるわけだ。

「オレオレ詐欺」でも、息子がとんでもないトラブルを起こしてしまったと思い込まされた時、家族に「あの子からこんな電話があった」と言える人と、体裁を重んじるあまり、密かにひとりで解決しようとする人とでは、結果が違う。

ここまでの分析を、自信過剰がち、持ち上げられて気分よくなりがち、孤独になりがち、自分がなにをしたいのか言えず、無自覚がち、騙されたとわかってもダンマリしがち……こう言い換えてみる。すると、ネット上でデマに扇動されたり、フェイクニュースの拡散協力をしてしまう人々のふるまいとの共通点が浮かび上がる。詐欺の手口を情報として仕入れることも大事だが、自分のなかに巣くっている心の隙や恥の部分を認識する勇気も必要かもしれない。

(参考資料)
内閣府「平成30年度青少年のインターネット利用環境実態調査」
警視庁捜査第二課広報資料「オレオレ詐欺被害者等調査の概要について」
BBソフトサービス「インターネット詐欺リポート(2016年8月度)」
NHKニュース「オレオレ詐欺続発」(2003年)
内閣府「平成30年版高齢社会白書」
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