「ふるさと納税」法改正がむしろ歓迎される理由 ルール強化でふるさと納税は進化していく

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北海道栗山町では「メロン男子」と称する自治体職員の写真付きの礼状を送付する(撮影:尾形文繁)
2019年6月1日、ふるさと納税のルールが大きく変わる。
ふるさと納税制度は、出身地や旅行で訪れた場所など、自分が「応援したい」と思う自治体に寄付ができる仕組みだ。寄付をすると、自治体から特産品・名産品などを「お礼の品」として受け取ることができる。寄付した金額の分、その年の所得税還付と翌年度の個人住民税の控除が受けられる。控除の上限額に達するまでは、いくら寄付しても自己負担額は2000円。こういった仕組みの便利さや返礼品の魅力が支持され、その市場は近年急速に拡大してきた。
しかし、同時に「返礼品の過熱」というひずみを生んだ。地元の特産品とは呼べない旅行券やAmazonギフト券を返礼品にする自治体が現れ、多額の寄付金を集めた。「地場産品で正直に運営している自治体が報われない」といった不満も日に日に高まった。こうした事態に総務省は、「(返礼品は)地域の経済に寄与する地場産品」「(寄付額に対する返礼品の割合は)3割以下」にするよう何度も促してきた。だが、強制力のない通知だったため、事態は改善されなかった。
そこで総務省は今回、強制力のある「法律」でふるさと納税のルールを新たに定めた。今後は総務省の事前審査を受け、「返礼品は地場産品で、かつ寄付額の3割以下」などの基準を守らない自治体は、ふるさと納税制度の対象外となる。さらに、募集のための広告費や返礼品の送料などの費用を含めて、経費を寄付額の5割以下に抑える必要もある。
その結果、総務省の注意・警告に従わない大阪府泉佐野市など4市町は、制度の対象から外されることになった。6月1日以降、これらの対象外自治体に寄付をしても、寄付者は税優遇を受けられない。
ふるさと納税はどうあるべきか。ふるさと納税ポータルサイトの最大手「ふるさとチョイス」代表の須永珠代氏を直撃した。

ふるさと納税市場は引き続き拡大する

――法改正によってギフト券などの過剰な返礼品が制限されます。ふるさと納税の人気は終わるのでしょうか。

そんなことはない。市場は引き続き拡大していくだろう。ふるさとチョイスが寄付者に対して行ったアンケート結果からも、「今回の法改正によってふるさと納税をやめる」という人はほとんどいないことがわかっている。

一度寄付をした人は、翌年以降も続ける傾向がある。「こんなに簡単なら、もっと早く利用すれば良かった」との感想を持つ寄付者は多い。寄付をする人が毎年積み重なっていくので、(今後も)しぼむことはまずないと見ている。

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