数学が苦手な人が陥る「平均計算」の落とし穴 暗記だけで済ます算数では理解は進まない

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数学教育の落とし穴はどこにあるのでしょうか(写真:freeangle/PIXTA)

4月25日に配信した筆者の記事『大学生が「%」を分からない日本の絶望的な現実』に関しては、多くの皆様に読んでいただき、さらに多様なご意見も発信していただき、心から感謝する次第である。

そこでは、意味を理解せずに「やり方」の暗記だけで済ます算数・数学の学びを導く教育に対しては、抜本的な改革が必要であることを訴えた。だからこそ、拙著『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥』で、世に問い掛けた次第であった。

「やり方」だけ暗記の算数・数学学習の落とし穴

今回は、そのような「やり方」だけ暗記の算数・数学学習の落とし穴を体験する問題を紹介したい。問題は、誰でも考えることができるものである。問題のすぐ後にある解答を載せるが、それは必ずしも正解ではない。それぞれの解説に正しい解答を記載している。

問題1 ある企業の売上高が2016年に対し2017年は10%成長し、2017年に対し2018年は20%成長したものは、2016年に対し2018年は何%成長したことになるか。
ある解答式 10+20=30
ある答え 30%

問題1の解説をしたい。「~に対して」という国語的な表現を正しく理解する必要がある問題で、冒頭に紹介した拙著でも用いている。題意より、2017年の売上高=2016年の売上高×1.1であり、2018年の売上高=2017年の売上高×1.2となるので、2018年の売上高=2016年の売上高×1.1×1.2が成り立つ。1.1×1.2=1.32だから、正解は2016年に対し2018年は32%成長したことになる。

この問題は、前回の記事中にある「2億円は50億円の何%か」という問題よりも、大学生の正解率は一段と悪くなる。

平均を出すというときには調和平均もあるが、主にたし算の考え方である相加平均とかけ算の考え方である相乗平均という2つの方法がある。

例えば、Aさんの体重が2016年に対し、2017年は10kg増加。2017年に対し2018年は20kg増加したとき、この2年間で1年間あたり平均何kg増加したのか?という問題があったとする。このときは、(10+20)÷2=15kgという考え方で合っている。これが相加平均の考え方だ。

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