田園都市線スーパーが客離れを起こした「真因」

“グルメな主婦"という乱雑な幻想

おしゃれに生まれ変わったスーパーが客離れを起こしたわけとは?(写真:IYO / PIXTA)
お洒落な店に生まれ変わったのに、なぜか店はガラガラ。こんな店を見かけたことはないだろうか?
マーケティング戦略コンサルタントであり、『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』の著者でもある永井孝尚氏によると、「これは顧客が求めることを見間違えた典型的な例だ。ジョブ理論にそのヒントがある」という。そこで、ジョブ理論をもとに、客離れの理由を読み解いてもらった。(本記事は、同書の一部を再編集したものです)

 

顧客の「ジョブ」を見失ったスーパー

田園都市線沿線に、気になって仕方がないスーパーがある。もともとごく普通のスーパーで、普段の食品や台所道具などの日用品が一通り揃い、近くに住む我が家は重宝していた。便利に感じていたのは周囲も同様だったようで、夕方になるとレジには奥様方が行列し、賑わっていた。

ある日このスーパーが全面改装し、全国の食材を揃えたオシャレな空間に生まれ変わった。「沿線にはグルメな専業主婦が多いから、好みにあわせよう」ということのようだ。一方でグルメな食材を数多く陳列するため、洗剤などの日用品は売るのをやめてしまった。

改装から数週間後。夕方の奥様方のレジ行列が消えてしまった。見た感じでは、客数は3割減。なぜお客が減ったのか?

このナゾを解くカギが、イノベーション研究の世界的第一人者であるクレイトン・クリステンセンの著書「ジョブ理論」にある。

世の常識を次々と破壊する人を「イノベーター」と呼んだりする。中には「オレはイノベーターだ。常識外れの無茶な挑戦が大事」と考え、大胆に振る舞う人もいる。しかし単に無茶をするだけでは、成功する確率は低い。実はイノベーションには、成功パターンがある。これが分かれば無茶ぶりをしたり、成功を運任せにする必要がなくなる。

本書でクリステンセンは、無駄に大胆なことをすることなく、イノベーションを起こす方法を紹介している。それが「ジョブ理論」だ。「ジョブ」とは「顧客が片づけなければいけないこと」だ。

ジョブ理論は「ジョブ」「雇用」「解雇」という独特の言葉で、商品を買う理由を考える。

我が家はマンションの1階だ。庭の雑草は生え放題。管理人さんからは「手入れしてください」と言われている。この「庭の手入れをしなければならない」が「ジョブ」だ。

しかし私は庭仕事が大の苦手。私が庭の手入れをやらないので、見かねた妻がプロの庭師にお願いしたら、短時間できれいサッパリ雑草がなくなった。しかも庭一面を人工芝でカバーし、草が生えないようにしてくれた。我が家では草むしりの「ジョブ」から私はめでたく「解雇」され、庭師が「雇用」されたのだ。

ジョブ理論ではこのように、顧客の立場に立って次の質問を問い続けていく。

次ページ表面的な顧客のプロフィールで、商品は売れない
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