ANAが座席指定の「有料化」に踏み切った背景 主要航空会社の座席指定料金の実態を調査

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なぜANAは座席指定の有料化に踏み切ったのでしょうか(撮影:尾形文繁)

ANAは、2019年5月29日新規購入分(2019年8月19日以降の搭乗分)から国際線エコノミークラスの座席指定について、新たに料金を徴収するようになった。その概要は以下のとおりである。

赤い非常口前の座席の追加料金は1区間につき4500~5500円。 黄色い機内前方の窓側と通路側の追加料金は1区間につき1500~2500円(画像:全日空ホームページ)

座席指定で追加料金が課されるのは、非常口前の座席(イグジットロウ)と機内前方の窓側と通路側の座席だ。機内後方席については追加料金が発生しない。追加料金は非常口前が1区間につき4500~5500円。機内前方の窓側と通路側が1500~2500円。アジア内の短距離路線では安く、欧米線の長距離路線では高くなる。

また、追加料金が必要となる運賃は予約クラスがV・W・S(ANAのWebサイトで「Value」と表示される)、L・K(「Super Value」と表示される)の場合のみだ。

ANAマイレージクラブの上級会員のうち、「ダイヤモンドサービスメンバー」と「プラチナサービスメンバー」とそれらの上級会員と同じ予約記録で予約された乗客については、追加料金は課されない。ただし、スーパーフライヤーズ会員を含むそのほかの上級会員については、非会員と同様に上記座席についての追加料金が必要となる。

ANAマイレージクラブのANA国際線特典航空券利用の場合、追加料金は課されない。国内線や他社運航便のコードシェア便は今回の改定の対象外だ。

ANA側の説明は?

今回の改定をひと言でまとめると、足元が広い座席や窓側、機内前方などの座席指定には追加料金が課されるが、比較的高い運賃で予約している客やマイレージプログラムの上級会員のうち、とくに利用頻度などが高い客にはこの追加料金は課されないということになる。

改定について、ANAは2019年4月17日付のプレスリリースで次のように説明している。

「これまで事前座席指定については、運賃(予約クラス)に関わらずご購入いただいたお客様から先着順にて座席をお選び頂いていたため、通路側や窓側など比較的人気の高い座席が早い段階で埋まってしまうケースが多く発生しておりました」

実はこれまでも機内前方の座席などはマイレージプログラムの上級会員でないと事前の座席指定ができないことが、一部で知られていた(上級会員がログインしてシートマップを見たときと、通常会員がシートマップを見たときの空席状況が異なることからそれが確認できる)。今回の改定では、こうした違いが明文化されたということになる。

「LCCでないのに金次第か」と、いささか世知辛く感じる人もいるかもしれない。しかしANAを擁護するわけではないが、相対的に「条件のよい」エコノミークラスの座席指定について、フルサービスキャリアでも費用負担を強いるのは世界的な潮流である。

なお、2019年5月29日の定例記者会見で全日空の平子裕志社長は今回の座席指定の有料化について「海外のエアラインの事例にならって料金をいただく仕組みで、増収策である」と明言している。

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