失敗を「引きずる人」「糧にする人」の致命的な差 人生が終わるような失敗は「まず起こらない」

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失敗した後にやるべき大切なことは、後悔や反省ではありません(写真:taa22/iStock)
臨床に携わる一方、TVやラジオ番組でのコメンテーターや映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍する精神科医・名越康文氏による連載「一生折れないビジネスメンタルのつくり方」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。

覆水盆に返らず

誰もが、仕事で失敗はしたくない、と思っています。心配性の人は、できるだけ準備を整え、あらかじめ失敗の芽を潰しておこうとするでしょう。あるいは失敗を上司に知られたくないあまりに微妙にごまかしたり、思わずウソをついてしまったりした経験のある方も、いらっしゃるかもしれません。

ただ、あえて強引に言い切ってしまいますが、心理学的に見たときに、「失敗」について私たちが肝に銘じておくべきことは、「失敗は決してなくなりはしない」ということと、残念ながら「失敗をなかったことにはできない」ということです。これは、「いかにして失敗を防ぐか」を考えるよりも、ずっと大切なことです。

どれほど優秀な人でも、どれほど完璧なプロジェクトでも、それを担うのが人間である以上、必ず失敗はあります。どれほど完璧な準備をしていても、不測の事態というのは起きるのです。そして何より重要なのは、失敗というのは、起きてしまったら、それを「なかったこと」にはできないということです。

もちろん、失敗した後に、その「穴埋め」をしたり、失敗から学び、それを上回るような成果を持ってきて、失敗を「帳消し」にしたりすることはできますし、世の中にはそういう実話がいっぱいあります。しかし、失敗そのものを消去することはできません。

「覆水盆に返らず」というのは、真理です。机から落ちて、割れてしまったグラスは、元のとおりにはなりません。失敗はなくならないし、失敗自体を「無」にすることはできない。当たり前のことですね。ではなぜ、わざわざ、こんなことを強調するのか? それは私たちが、しばしば失敗を受け入れられないことによって、さらなる失敗を招き寄せてしまいがちだからです。

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