「252のケース」に見る、いい戦略・悪い戦略 日本企業の経営者の「戦略眼を鍛える」視点

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マネジメント層の悩みはつきません(写真:metamorworks/iStock)
「日本企業の戦略の他社事例を知りたい」。経営者、経営幹部のそんな切実な悩みに応える本がある。日本企業の151の成功ケース、101の失敗ケースを網羅的に収めた三品和広著『経営戦略の実戦1 高収益事業の創り方』だ。この本の魅力について、経営共創基盤の塩野誠取締役マネージングディレクターが解き明かす。

なぜ経営者は精神的な質問をするのか?

偉大な経営者の講演を普通の経営者たちが聴くという、財界でよくある場面がある。このとき、講演の後に出る質問は決まって精神的なものが多い。

『経営戦略の実戦1 高収益事業の創り方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「あの重大な決断をしたときのお気持ちは?」

「なぜそこまで自分を信じることができたのですか?」

「重大な決断の前に心がけているルーティンなどはありますか?」

といった類いのものである。経営者が日常的に考えているであろうこと、例えば

「多角化した事業の個々のマルチプル(倍率)の差異が大きく、各事業のトータルの評価と、市場が見ている企業評価額の間に乖離があるとお考えだったのでしょうか?」

といった具体的な質問はまず出ない。

次に、人工知能を専門とする学者の講演を経営者たちが聴くような場面を考えよう。令和の時を迎えた現在でも、普通の経営者たちからは、「人工知能はいずれ人間を襲うようになりますか?」といった漠然とした質問が出されることだろう。

日本のように、これだけビジネス書があふれかえっている国も珍しいが、これほど数多の書籍が並んでいても、多くの経営者の意思決定や経営戦略が飛躍的な進歩を遂げた形跡は、残念ながらまだない。

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