「離婚望む妻」を絞殺した73歳夫の複雑な胸の内

老夫婦の「すれ違い」が招いた後味の悪い事件

別期日で開かれた被告人質問も、同様の流れで進んだ。そんな中でも、文雄被告は弁護人からの質問には泣きながら「自分が殺さなかったら……また違うこと、あったかもしれない……」と述べた。通訳曰(いわ)く「すゑ子さんのうつ状態について思い至っていれば、違う選択肢があったかもしれない」という意図だという。

だが、質問者が検察官に交代し「違う選択肢があったと言いましたね?」と問われると「………」と返答をせずに無反応状態となっていた。

質問では、脳梗塞で倒れる前の文雄被告の言動についても問われていたが「質問がわかりません」とたびたび答え、すゑ子さんの息子が証言したような過去があったかどうかは、本人からしっかりと語られることはなかった。

「夫婦のすれ違い」が招いた後味の悪い事件

事件の日、文雄被告がすゑ子さんに馬乗りになり、首を絞めて殺害したことは確かだ。このときすゑ子さんは目を覚まして強い抵抗を示し、文雄被告の髪の毛が大量にソファに散らばっていたことが、証拠から明らかになっている。

脳梗塞の後遺症を抱えた生活の中で、すゑ子さんに冷たくされたという文雄被告だが、すゑ子さんはそれよりずっと前から、夫婦関係に悩んでいたのではないだろうか。文雄被告の奔放な振る舞いにより生じていた、夫婦のすれ違い。それが事件を招いた。

文雄被告には懲役10年の判決が言い渡されている。だが、懲役を終えても、文雄被告がすゑ子さんの気持ちに寄り添えるかは怪しい。“脳梗塞の後遺症に苦しむ自分に冷たくした”と考えている文雄被告には、夫婦の不和に苦しんでいた頃の、すゑ子さんの気持ちをおもんぱかることはできるのだろうか。なんとも後味の悪い事件だった。

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