実は「温暖化の産物」だったモンゴル巨大帝国 

「気候変動と生態環境」で捉えるアジア史

モンゴル帝国はどのようにして遊牧民族を統一し、拡大していったのでしょうか。岡本隆司氏がアジア史をひもときます(写真:Olivier LAURENT/iStock)  
現在、歴史学では旧来の各国史(ナショナル・ヒストリー)やそれを寄せ集めただけの「世界史」の限界を乗り越えようと、「グローバル・ヒストリー」に注目が集まっている。
広域の交易活動や文化接触、あるいは言語の交錯や人々の移動など、国境を超えたダイナミズムから、ナショナル・ヒストリーの枠組みでは捉えきれない動きを歴史化しようとする機運が高まっていることがその背景にある。
だが「グローバル・ヒストリー」だけでは、世界史全体を捉えきれない。文明発祥以来のアジア史固有のダイナミズムを閑却してきたからである。
教養としての世界史の学び方』を上梓した東洋史家の岡本隆司氏が、アジア史から世界史を捉えなおす意義について解説する。

『疫病と世界史』の意義と限界

「グローバル・ヒストリー」を世に知らしめたのは、何といっても、マクニールの『疫病と世界史』という名著です。国境などにかかわらず、人類に脅威を与えてきたものは、感染症にしくはありません。目前にもあてはまることであって、そこに着眼して世界史を書き改めた『疫病と世界史』は、ほんとうに興味深い著作でした。

『教養としての世界史の学び方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

それでも、まったく疑問がないわけではありません。疫病・感染症は確かに恐ろしいものです。ですが、その病症・病原体やウィルスなどを考えるのは、むしろ医学の範疇に属します。

日常に忙しく、知見も乏しい一般の人が、ウィルスや免疫のことまで考えながら暮らせるはずはありません。われわれが日々感じ、思うのは、気候・気温や生活習慣の変化です。寒ければ病気を心配し、暖かくなれば安心します。労働や食事が大きく健康を左右するのは、言わずもがなでしょう。

病気はウィルスの作用で起こるのだ、と言われます。確かに医学的な説明は、そうなるに違いありません。しかしウィルスは大気中に、いつも数知れず漂っているのに、病気がはやる時期とそうでない時期があります。

寒くなればインフルエンザが流行しますが、夏にそうなるのはめずらしいでしょう。病気にかかりやすい人もいれば、そうでない人もいます。偏食や疲労、ないしは体質によることが少なくありません。

それなら、病原体・ウィルスは誰にでもあてはまる普遍的な条件であり、共通因数として捨象できます。病気の直接的な原因は、変化する気象や人それぞれの生活・身体であると見るほうが、われわれにはわかりやすい、常識的な考え方だといえます。

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