「薬物依存の過去」を海外セレブが隠さない理由 アベンジャーズ俳優と「薬物」との苦しい戦い

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けじめ、という意味を最も感じさせたと筆者が個人的に思うのは、2003年のロバート・ダウニー・Jrのインタビューだ。彼が「ゴシカ」で久々にメジャースタジオの娯楽作に復帰した時期で、テープ起こしを読み返してみると、話題が依存症の記憶ばかりで、あらためてびっくりした。

ダウニーJrと薬物との戦い

「今、僕の頭はドラッグにハイジャックされていない。その状態は、言ってみれば戦った後みたいで、疲労感もある。あの戦いには、もう戻りたくない。ドラッグにハイジャックされている自分は、最高のバージョンの自分ではないから」と気持ちを語った彼はまた、依存症に苦しむ人に、「ほかの人を傷つけているわけじゃない、死ぬことになっても自分だけなんだし、などと言うな。それは間違いだ。影響を受けるのは自分だけじゃないんだよ。それを聞くと、本当に腹が立つ」と、強く呼びかけてもいたのだ。

この取材は、別の国のジャーナリスト数人と一緒のグループインタビューだったのだが、最後にそのうちのひとりから「今日はみんなこの話ばかり聞きましたが、怒っていませんか」と聞かれると、彼は「いや、不快じゃないよ。でも、この映画の宣伝活動が終わったら、もうその話はしない。僕が裸で道を走り回っていた、なんてことがあったら、別だけど」と答えている。

そして、そのとおり、その後は、筆者が見てきたかぎり、もう彼にこの話題を振る人はいない。ドラッグや酒のせいで狂った行動を取り、メディアに取り上げられる生活と、彼は完全にさよならをしたからだ。今思えば、あれは、「人生の再出発宣言」でもあったのかもしれない。

酒をやめて1年も経たないうちにそのことについて語ったピットも、「新しい自分宣言」をしていたのではないかと思われる。一方で、90年代末に立ち直っているカーティスが昨年秋にまたあえて自分からこの話を持ち出したのは、他者に啓発を与えたかったからだろう。

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