小田急ロマンスカー「あの色」を生んだ天才画家 下北沢駅で話題の「奇抜な壁画」に秘密がある

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小田急小田原線の複々線化完成を記念した縦2.6m、横8.9mの大型の陶板レリーフ(筆者撮影)

3月末、小田急線の下北沢駅に、巨大レリーフが設置された。小田急線の複々線化完成を記念した、パブリックアートだ。タイトルは「出会いそして旅立ち」。

そのニュースを見て、思わず私は「あっ」と声を上げた。そこに表現されたモチーフは、私がよく知っているものだったからだ。

レリーフは、小田急に深く関わっていた、洋画家の宮永岳彦さん(1919~1987)の原画を基に構成されたという。宮永岳彦という名前を聞いてピンとこない人もいるかもしれないが、小田急の特急ロマンスカー・SE(3000形)のカラーデザイン、バーミリオンオレンジに白とグレーの塗装を考案した人である。

宮永岳彦とはどんな人物?

宮永さんは神奈川県秦野市ゆかりの洋画家。美人画を中心に、雑誌の表紙から商業デザインまで多彩なジャンルで活躍した昭和を代表する画家の1人だ。1946年から15年間、秦野市名古木のアトリエで創作活動を続けていた。

宮永岳彦さんが考案したカラーリングのSE車(写真:小田急電鉄)

宮永さんの作品の多くが鶴巻温泉駅から徒歩2分にある「秦野市立宮永岳彦記念美術館」に展示されている。

そこに2016年10月14日、「小田急コーナー」が開設された。宮永さんと縁の深い小田急と連携し、小田急関連作品を常時展示している。そう聞いて、昨年見に行った。

そもそも私も宮永岳彦さんの存在を知らなかった。昨年10月13日の特急ロマンスカー・LSE(7000形)ラストランで終着駅の秦野で下車した際、初めて降りた駅の情報を得るために、駅に置いてあったパンフレットを手に取った。その中で、秦野市鶴巻温泉「弘法の里湯」に併設されている「秦野市立宮永岳彦記念美術館」の存在を知る。

どんな人なのか気になったので、同行していた小田急の方に訪ねたところ「小田急の特急ロマンスカーのバーミリオンオレンジを手がけた方です」と説明されたのだった。

LSE車が大好きだったので、車両に使用されている「バーミリオンオレンジ」という色については知っていたが、それをデザインした人については恥ずかしながらまったく知らなかった。しかもそれをLSEのラストランの日に知るとは……。不思議な縁を感じた。

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