スリランカ同時多発テロの背景にある宗教対立 内戦を乗り越え観光も振興するさなかの惨劇

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爆発の被害に遭ったスリランカの聖セバスチャン教会(写真:ロイター/アフロ)

スリランカの最大都市コロンボなどで、現地時間4月21日午前9時頃、同時多発的に3つのホテルと3つのキリスト教の教会で爆発が発生、午後にはコロンボ郊外の民家と国立動物園付近のホテルで2度の爆発があり、被害は合わせて8カ所に及んだ。

地元警察は、一連の爆発による死者は290人、負傷者は500人以上にのぼると発表。その後も、コロンボ郊外のバンダラナイケ国際空港付近で、新たにパイプ爆弾とみられる爆発物が見つかり、軍が撤去するなどし、空港の警備やセキュリティーチェックも最大限の厳戒態勢が敷かれた。

帰国や入国で空港を利用するスリランカ人や海外からの観光客などで溢れ返り、騒然としている様子がツイッターなどに相次いで投稿された。夜間外出禁止令が出され、営業可能なタクシーの数が限られたため、市内への足を確保できない人たちで空港の外にも列ができるなど、混乱は続いている。スリランカ大統領府は、4月23日午前0時からの非常事態宣言の施行を命じたと発表した。

3つの高級ホテルと3つの教会で爆発

爆発があったのは、キリスト教のイースター(復活祭)を祝うため、多くの人が集まっていた最大都市コロンボの「聖アンソニー教会」、国際空港に近い漁村で、近年はリゾートエリアとしても開発が急速に進むネゴンボの「聖セバスチャン教会」、そして東部バティカロアの「シオン教会」に、5つ星ホテル「シャングリラ」や「シナモン・グランド」「キングスベリー」など3つの高級ホテルだ。

スリランカは、反政府武装組織LTTE(タミル・イーラム解放のトラ)と政府軍との間で26年間にわたる内戦が続き、7万人以上が犠牲となったと言われている。LTTE側は、少数派の主にヒンドゥー教徒のタミル人が多く暮らす北東部の分離独立を掲げ「人間の盾」などを利用して戦うなか、2009年にスリランカ政府軍がLTTE支配地域を制圧、当時のラージャパクサ前大統領により内戦終結が宣言された。

それから10年が経ち、内戦の傷跡を少しずつ乗り越え、今、スリランカは急速な発展を遂げつつある。世界遺産やビーチリゾートなど豊富な観光資源を目当てに世界中から観光客が集まり、有名な外資系ホテルブランドが続々と進出している。

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