胃がん検診「内視鏡」「造影」どちらが有効か

初期に自覚ほぼなし、専門医が見逃すことも

小腸は消化管の入口からも出口からも離れているため内部の様子が知られておらず、消化管における暗黒大陸と呼ばれてきました。しかし、カプセル内視鏡の進歩により小腸の病気に関する情報が集まったことで、診断と治療法の研究が大いに進みました。

検査の負担が軽いのは長所ですが、気になる場所があっても止まって観察するのが難しく、組織を切り取ることもできないので、いまのところカプセル内視鏡の検査能力は、通常の内視鏡には遠くおよびません。

また、とくに胃は中が広いため、通過するだけのカプセルで壁全体を観察するのは不可能です。どの検査にも強みと弱みがあるわけです。

内視鏡にも死角あり

胃がん検診についていうと、技術と経験を持つ医師が内視鏡検査を行えば、胃がんを早期発見できる可能性が高いと考えられます。

定評のある消化器系の専門医が近くにいるなら内視鏡検査を受けるのがよいでしょう。

日本で行われた調査では、前回から3年以内に内視鏡検査による胃がん検診を受けた人は、そうでない人とくらべて、胃がんによる死亡率が約30パーセント低いことが示されています。

その一方で、一部には、専門医であっても早期胃がんの20~40パーセントを発見できなかったという調査報告も存在します。

人の体は複雑で個人差があり、そこに胃炎や胃潰瘍による変化も重なるとなれば、小さな胃がんの発見は簡単ではないということです。

これに対して造影検査は、一定の正確さでがんを発見できるうえに、機械をバスに積んで、海辺の町でも農山村でも出かけて行って、検査を実施できる強みがあります。

胃の壁全体を見渡せることから、現在でも、お腹を切る胃がん手術の前には必ず造影検査を行います。「受けても意味がない」は言い過ぎです。

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国立がん研究センターの「社会と健康研究センター検診研究部」は、がんによる死亡率を下げるのに役立つことが科学的に証明されているかどうかで検査法を評価しています。

これによると、内視鏡検査と造影検査のどちらにも死亡率を下げる効果があり、いずれも胃がん検診として推奨できるとのことでした。

ただし、注意点として、造影検査ではバリウムを飲む際の誤嚥(ごえん)に注意すること、そして内視鏡検査では、心配ない変化まで病気ととらえて過剰な治療を行わないこと喉の麻酔薬による副作用と、食道と胃の粘膜を傷つけるおそれがゼロではないことをあげながら、事前に十分な説明をするよう求めています。

地域の事情で近くに専門医がいない人や、どうも内視鏡検査は苦手だという人は、造影検査でかまわないので、とにかく検診を受けましょう。

そのうえで、50歳以上の人は、可能であれば3年に一度、内視鏡検査を受けておくと安心です。

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