「山本権兵衛」元総理の心温まる愛妻物語 豪快でありながらロマンチックな総理だった

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山本権兵衛総理大臣は時代の風潮にとらわれず、妻を1人の人間として大事にしていたといいます。写真はイメージです(写真:Fast&Slow/PIXTA)

安倍晋三総理のアキレス腱の1つが夫人であることは多くの認めるところであろう。夫人の無邪気な交友は、しばしば週刊誌のネタとされてきた。ただし、歴代総理と夫人のエピソードを見たときには、安倍総理夫妻の問題などは大したことではないようにも思える。

筆者は、『総理の女』を執筆するにあたり、伊藤博文(以下、敬称略)から東條英機まで宰相の夫人や愛妾(あいしょう)にまつわるエピソードを収集してきた。さすがに昔は大らかというか、現在では考えられないような話が多い。

なかでも豪快でありながらロマンチックさを感じさせるのは、山本権兵衛・第16、22代総理大臣の愛妻物語かもしれない。その愛妻ぶりは、おそらく現代の女性にも好感を持って受け止められるものだろう。

山本の相手はどんな人だったのか

山本がのちの妻となる「とき」と出会ったのは25歳のときだった。当時山本は海軍兵学校を卒業したばかりの少尉補。ときのほうは17歳。品川の遊郭「箸屋」の遊女だった。新潟から売られてきたばかりのときは、田舎風のところは抜けていなかったが、そこがまた奥ゆかしく、海千山千の女郎たちの中では際立って可憐だった。またはっとするような美人でもあった。

山本はときを気に入り、足しげく通ううちに、身の上を知ることとなった。実家は貧しい農家。父親の病気をきっかけに借金がかさみ、身売りすることになった。

「これからどうなるのか不安で……」

自分の前で涙を流すときを見て、山本は決心する。

「ときを苦境から救い出す!」

普通ならば金を払って身請けするところだ。実際に、伊藤博文はそういう手で芸者を身請けしている。

山本も海軍エリートなので、金がないわけではなかったはずだが、なぜか彼が選んだのは「強奪」という手だった。その手伝いを彼は海軍の仲間たちに依頼する。

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