大手のプライドを捨てられない46歳男性の苦悩 40歳で退職、7社転々として現在アルバイト

✎ 1〜 ✎ 52 ✎ 53 ✎ 54 ✎ 最新
拡大
縮小
「会社に、メンタル疾患に対する理解がなかった」と話すヨシユキさん(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「マンション管理会社の大手で9年と7年勤めて、39歳でいわゆる追い出し部屋に異動。40歳で自己都合退職に追い込まれました。その後、7社転々として現在アルバイトです」と編集部にメールをくれた、46歳の独身男性だ。

「頂戴いたします」

そう言って、スマートフォンを両手で掲げ持つ。それをお盆代わりに、渡された名刺を載せ、深々とお辞儀をする。過剰にも見えるマナーを見せるヨシユキさん(46歳、仮名)は、以前、ふたつの大手不動産会社に、それぞれ9年と7年、勤務していた経験があるという。

ひとつは、マンションの供給戸数全国トップクラス、ひとつは、財閥系の有名企業。ヨシユキさんは具体的な会社名を挙げながら「合計16年間、営業マンとしてやってきました。名刺交換は基本中の基本ですから」と、胸を張った。

1社目でメンタル不調に陥り…

ただ、このうちの9年で退社することになった1社目は、毎月80~100時間の残業が当たり前という長時間労働が常態化した職場だった。そのせいでメンタルに不調をきたし、1年半の休職のすえに退職。

この連載の一覧はこちら

いったんは復職し、定時退社で“慣らし運転”をするまでに回復したという。ところが、昼休み中の電話番を任されていたとき、たばこを吸いに席を外したタイミングで、運悪くクレーム電話がかかってきてしまった。代わりに対応した後輩社員から、頭ごなしになじられたことで、再び休職。そのまま退職を余儀なくされた。

また、2社目は、「些細なミス」が原因で、いわゆる“追い出し部屋”へと異動。些細なミスとは、マンションオーナーと周辺の戸建て住民との間のトラブルを、うまく収めることができず、顧客でもあったオーナーとの契約を切られてしまったことだという。異動から数カ月後、今度は畑違いの専門部署への異動を打診され、退職を選んだ。

大学を卒業したときは、就職氷河期だった。“買い手市場“の中、なんとか就職した大手企業で、立て続けに退職に追い込まれたことを、ヨシユキさんはこう振り返る。

次ページ会社の理解のなさがいけなかった?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT