古典をあえて「曲解」して仕事に応用するコツ

ヴェーバー名著から「新たな顧客創造」考える

その圧巻のなかで私は、感動の残酷な理由を理解した気がした。主人公は哀しみを経験せねばならなかったのだ。その哀しみゆえに、主人公は、逆説的ながらそれ以降に生きる意味を知った。そして、その哀しみゆえに、主人公は歌に何かが宿ったのだ、という結末のように見えた。

哀しみと、その哀しみゆえの輝き。ここにきっと、人生のすべての逆説がある。つまり、支障ゆえの、逆説的な輝きだ。

神を信じることがなぜ、利潤を稼ぐことにつながるの?

たとえば、会社で社長が新入社員にこういったとする。「君たちは、頑張るかもしれない。頑張らないかもしれない。でも、誰を出世させるかは、もうこの時点で決めているからな」といったらどうだろう。

きっと「なんてことをいうんだ」と、仕事への情熱をなくすに違いない。たぶん社長とおなじ出身大学を選ぶんだろうとか、美男美女を選ぶのだろう、と思って早期段階から脱落する社員もいるだろう。

しかし、ここで面白いのは、社長がいう「誰を出世させるかは、もうこの時点で決めている」を確認する術がない。その真偽を聞いてもどうなるだろう。ここで重要なのは、「ああきっと私が選ばれているに違いない」と思い込むことが仕事では重要に作用するという点だ。ほんとうに社長がその社員を選んでいるのか、選んでいないのかは問題がない。

あくまでも、誤解に近く、信仰にも近い、信じる行為こそが、日々の仕事に意味と意義を与え、そして効率化や改善を促す。その社員はもともと選ばれていなくても、社長の考えは変わるかもしれない。選ばれていたら、その社員はやはり出世するだろう。それに社長が死んだら、次期社長は実力者たる、その社員を出世させるに違いない。

もしかすると、社長が自分を選んでいるにちがいないと信じることは、根拠なく不合理で不条理なことかもしれない。しかし、自分を採用してくれた社長だ。その一点の根拠なさを信じることができればいい。そして重要なのは、仕事に打ち込む禁欲さと、物事を合理的に進める効率さになるだろう。

マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』では、表題通り、プロテスタンティズムが資本主義の基礎をつくったと考察されている。これがビジネスパーソン視点で、いま読んでも、あまりに示唆に富んでいる。

宗教とは、一見、ビジネスとは正反対と思われる。しかし、なぜプロテスタンティズムの勃興した地域に、資本主義の精神が誕生したのか。神を信じるということが、なぜ、利潤を効率的に稼ぐことにつながっていったのか。それは、前述の、なぜか社長から選ばれていると信じている態度に近い。

次ページまず資本主義の精神が誕生する前の記述から…
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