朝ドラ「なつぞら」が最高のスタートだった理由 成功へのカギは「保守と革新の連立」

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連続テレビ小説「なつぞら」会見 NHK「なつぞら」の会見を行った左から松嶋菜々子、粟野咲莉、広瀬すず、草刈正雄、藤木直人=2019年3月6日(写真:日刊スポーツ新聞社)

NHK朝ドラの新作「なつぞら」が最高のスタートを切った。

第1週の平均視聴率は22.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、過去5年の朝ドラの中でトップだった。確かにその第1週は、筆者も見ていて、とても安定感・安心感にあふれた出来だと思った。今回は、その「安定感」を糸口に、「なつぞら」の成功のカギを考えていきたい。

「朝ドラらしさ」が十分に備わっている

「なつぞら」の安定感の源は、その非常に強い「朝ドラらしさ」である。それは、すでに人気を確固たるものとしている広瀬すずのヒロイン起用や、松嶋菜々子(「ひまわり」)、小林綾子(「おしん」)、山口智子(「純ちゃんの応援歌」)、比嘉愛未(「どんど晴れ」)、岩崎ひろみ(「ふたりっ子」)、北林早苗(「娘と私」)、貫地谷しほり(「ちりとてちん」)など、朝ドラ歴代ヒロインが総結集することからもうかがえる。

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また第1週から、前向きで健気という、いかにも朝ドラヒロインらしいキャラの奥原なつ(粟野咲莉・幼少期役)が、柴田家の泰樹(草刈正雄)や夕見子(荒川梨杏)に冷たく責められるのも、朝ドラ的には、とても既視感のあるシーンだ。

『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)の著者・木俣冬氏は、今回の「なつぞら」の脚本家である大森寿美男氏と「“朝ドラらしさ”とは何か」を、共に考える対談を同書の中で掲載している。

そこでは「『女の子の生き方のロールモデルを描く』ことが朝ドラ」だと結論づけられており、さらに大森氏は「『幼なじみが恋人に』と『フラれるライバル』と『長い間お世話になりました(註:とヒロインが三つ指ついて言う)』、この3つを入れると朝ドラになる(笑)」と発言している。これらの要素も、今回の『なつぞら』には組み込まれそうな感じがする。

と、いかにも「朝ドラらしい朝ドラ」という感じの「なつぞら」なのだが、ここで筆者は、その安定感を「いい意味で裏切るセリフ」があったことに注目したいのだ。

それは4月4日に放映された第4話で、なつが初めて搾乳した牛乳から作ったアイスクリームを、泰樹と2人で食べながら、泰樹がなつに言うセリフである。少々長いセリフなので、分割して分析してみる。

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