美術モデル「セクハラ訴訟」に感じるモヤモヤ

「環境型セクハラ」で思い出したある弁護士

さらに、「男性」と「女性」の対立がこの世で最も重要な問題だ、とマッキノンは言うわけ。だけど、それに同意できるだけの余裕がない人だっているでしょ。私は、留学から帰ってきて仕事がなかったときが一番つらかったけど、そのときにもし「女性という理由で職場で不当な差別を受けている」と言う正社員の人がいたら、「ちょっと待ってよ。こっちは生活の問題なんだから」って気分になったと思う。

失業中の男の人にとって失業はすごく大変な問題だろう。その目の前で「女性だからという理由で昇進できない正社員のほうが、失業中の男性より深刻だ」なんて誰が言えるの、と思うけど、それを言っちゃうのがマッキノンだったわけです。

わかるよ、わかる。変えられない性別という属性がアイデンティティの核になる人がいるのはわかる。その人が本当に性的なパフォーマンスで傷つき、それがその人にとって重要な問題だというのは理解できる。

話を聞かない人は聞いてもらえない

だけどさ、それぞれが、それぞれの生きにくさを抱えながら、真っすぐには進まない人生をなんとか歩んでいくのだ。人のコンプレックスは分からない。他人の痛みには鈍感になる。だからこそ、耳を澄まさないといけないのだと思う。なにがどうつらいのかを聞かないといけないし、想像しないといけない。本当に困っていることって恥ずかしくて人はなかなか言えないものだから。

それにもかかわらず「女性に生まれました!! つらいんです!!」と大声でがなり立てて、他の人の痛みに一切耳を傾けなければ、やっぱりそれはそっぽ向かれます。話を聞かない人は聞いてもらえない。優しくしない人は優しくもされない。だから、現実の社会では、マッキノンの言うセクハラの議論は大きな広がりにはならなかったのかもしれない。

もちろん、ここまで書いたことは「環境型セクハラ」という言葉から、私がマッキノンを想像して、なんとなくぶるっとしてしまっただけ。

大原さんはマッキノンではない。とにかく、反論が出るであろうことをあえて主張する人は、その主張の内容に賛成できてもできなくても、とっても偉いんだろうと思います。とか言ってる私ですが、大原さんの訴訟が話題になっていた時期から遅れて今何か言うくらいなら、最後まで黙ってればよかったのにってね。反論の余地は全くありません。ごめんなさい。

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