「まじめをやめる」末期患者が最期に得た悟り

介護した認知症の母に「ドロボウ!」と言われ

脳梗塞で倒れた義父、認知症の義母を世話し、夫にはがんで先立たれ、自身もがんに。認知症の実母の心無い言葉に対して罵倒で返した女性が得た悟りとは(写真:Mills/PIXTA)
これまで2000人もの終末期がん患者に寄り添ってきた緩和医療医、大津秀一先生。著書『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』は、実際に先生が体験した患者さんとのエピソードから、本当に幸せな生き方とは何かを教えてくれる一冊です。忙しい日々を送っていると、つい忘れがちなことばかり。死ぬときに後悔しないためにも、少しだけ歩みを止めて、一緒に考えてみませんか? 33のエピソードの中から、いくつかご紹介します。

後半生は大変なことだらけ

やってられない! ──末期がんを患う六十代女性の木島さんの声は部屋に響き渡りました。個室なので問題はありませんが、結構な声量です。顔は紅潮し、まなじりは上がっています。

彼女の吐き出したい思いを感じ、私は黙りました。

木島さんの後半生は大変なことだらけでした。

「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です

まずは、脳梗塞の後遺症で倒れた義父と、追って認知症になってしまった義母を、ほぼ彼女一人が世話しました。これは十年単位で時間を要しました。

その後、今度は夫が進行がんに倒れました。大腸がんで経過は五年以上に及びました。

ご本人の談によれば、「夫をようやく見送った」とき、今度は実母がひどい認知症になってしまいました。

実母は認知症からの被害妄想が著しく、木島さんが見舞いに行くと、「このドロボウ!」と罵倒しました。

木島さんの胸には怒りの感情が湧き起こります。その怒りの炎に油を注いだのが、実母は遠方に住む木島さんの実妹にはやたらと愛想がよいことでした。

発症前から、実母が何かにつけて頼っていたのは木島さんだったのに、認知症の妄想が手近な人にしばしば向けられることがあるとはいえ、評価は一八〇度コペルニクス的転回。「財産全部あげるわ」と実妹に言う一方で、木島さんをクソミソにこき下ろしたのです。

木島さんのストレスは甚大でした。胃がきりきり痛むのも、ストレスのせいだと信じて疑いませんでした。

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