ダイキン新卒100人「仕事しなくてOK」のなぜ

AI人材争奪線とは一線、自前育成の大胆戦略

「ダイキン情報技術大学が始まると知ったのは、入社後の集合研修でした。当初はAIやIoTが会社の事業とどう結びつくのかがよくわかりませんでしたが、トップのメッセージから、会社がこの分野に力を入れていることを感じ取り、受講を希望しました。私は学生時代から環境や安全に興味があるので、身に付けた知識や技術を基に、工場の安全や安心に貢献できたらと考えています」

同じく大学院で光学を専攻していた男性受講生は、こう話す。

「まったく新しい分野を勉強するうちにどんどん楽しくなってきました。ここで身に付けた知識を先輩や同期に伝える役割ができればと思っています。来年度からは部門演習が始まりますが、現場にいる人たちが大切にされていることがあるはず。そこを大切にしたうえで、自分の考えや知識を伝えられたらと思っています」

将来、自社の中で技術を生かすという目的意識をしっかりと持ちながら学んでいる受講生たち。ダイキンでは、こうした人材が持つAIやIoTの知識を確実にビジネスに生かす仕掛けも忘れてはいない。

「既存社員向けにAI技術開発講座・AIシステム講座の研修、マネージャー層向けにAI人材マネジメントの研修も行っています。このように『AI技術専門の新入社員』『AIビジネスの推進者となる既存社員』『AI人材マネジメントを行うマネージャー』というピラミッド型の階層をつくり、会社を変えていこうと考えているのです」(山下氏)

AIやIoTの活用で空気、空間の新しい価値創出へ

受講生が学んだAIやIoTの知識や技術は、現時点でもさまざまな活用例が想定できるという。

すでにダイキンでは、AIの活用を専門とするベンチャー企業と協業し、エアコンの修理業務にAIを導入しようと試みている。窓口に入ったユーザーからの修理依頼に基づいて、エンジニアが現場に持参すべき部品をAIが推奨するシステムを導入しようとしているのだ。

修理の際、エンジニアが必要な部品を持って行っていなければ、ユーザーの家を再度訪問しなければならない。適切な部品を持っていれば修理を1回で終わらせることができるため、AIシステムを使って修理の一発完了率を高めようというわけだ。それは、ユーザーの負担を減らすとともに、効率の良い修理体制の構築にもつながる。

さらに将来的には、販売データや修理実績に基づいて、現在使われているエアコンの状態を把握し、発売年やモデルごとの故障傾向をつかみ、問題が起きる前に保全や更新の提案ができる可能性があるという。

エアコンがわれわれの生活インフラになりつつある中、こうしたことをAI、IoTの活用によって実現することができれば、エアコンが止まることなくつねに快適な空気、空間を実現できるようになるかもしれない。

またダイキンは、その空気・空間の「新たな価値」の創造にもAI、IoTを活用しようとしている。18年2月には、オカムラやソフトバンク、東京海上日動火災、三井物産、ライオンなどと共同で、各社が保有する最新テクノロジーやデータ、ノウハウを活用する協創プラットフォーム「CRESNECT(クレスネクト)」を開設。「未来のオフィス空間づくり」に挑戦している。

単に涼しい空間、温かい空間をつくるだけでなく、仕事がはかどる空間、アイデアが思い浮かぶ空間、健康になれる空間などの付加価値がある空間の創造を目指して、オフィス空間での実証を予定している。今後は、オフィスにとどまらず病院、教育施設、住空間など、さまざまなシーンで求められる理想の空気、空間の創出を目指し、AIやIoTを活用していきたい考えである。

大事に育てられたAI、IoT人材が、どうダイキンを変えていくのか。非常に楽しみである。

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