「ザクロを食べるな」伝承残る福井集落の現在

菅原道真に由来、今では伝説知らない住民も

福井のある集落に言い伝えられる伝承をひもとくと、ザクロと有名な歴史上の人物の接点にいきあたります(写真: kolesnikovserg/PIXTA)

福井県福井市の天菅生町に、ザクロを食べてはいけないという言い伝えがある。同区に縁がある菅原道真(天神様)が、ザクロを食べたときに火を噴いたという伝説に由来し、かつては庭木として植えることもはばかられた。ただ「昔はよく親から聞かされた」という住民も、近年は言い伝えが薄れ、“罪悪感”を感じながら食べてしまうこともあるとか。

福井県立歴史博物館の学芸員によると、901年に菅原道真が藤原時平の陰謀により太宰府に左遷された時、その子孫も太宰府や地方に左遷されたという。

区の言い伝えによると、天菅生町には、飛騨高山に左遷された子孫の1人が現在の大野、勝山、鯖江を経て同区にたどり着いた。身元を隠すため名字を「菅波」と名乗ったという。地区には道真を祭った菅原神社もある。現在集落の戸数は14軒。

「道真公に申し訳ないけれども、時代の流れ」

ザクロの伝説は、道真にまつわる絵巻「北野天神縁起」に見られる。死後に怨霊となった道真が、時平を呪い殺そうと比叡山延暦寺を訪れた際の話。僧侶に時平を守らないよう懇願したが断られ、その時に食べたザクロが怒りのあまり炎に変わったという。この伝説が天菅生町の住民に伝わり、いつしかザクロを避ける風習ができた。

ザクロを食べない風習を説明する男性。書物には由来となった菅原道真の伝説が記されている=福井県福井市天菅生町(写真:福井新聞)

菅原一族の子孫とされる男性(85)は、父親から「ザクロを食べてはいけない。庭にも植えてはいけない」と言われた。子どもの頃は「食べたくても食べられなかった。他の地域の子を見てうらやましく思ったこともあった」と振り返る。初めて食べた時は「甘酸っぱくて、こんな味だったのか」と目を丸くしたという。

近年は風習が薄れ、伝説自体を知らない住民も多くなった。男性自身も多少の罪悪感を感じながらザクロを食べることがある。「道真公には申し訳ないけど、これも時代の流れですね」と、自宅の和室に飾られた天神像をちらりと見た。

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