大塚家具、「救世主」が現れても不安が残る理由 久美子社長「会社を立て直すまで続投」と表明

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3期連続の赤字に陥るなど、大塚家具の大塚久美子社長は窮地に立たされている(撮影:今井康一)

「ここ数カ月、心が折れそうな辛い日々を送ってきましたが、ビジネスも人間関係も最後は縁だと実感しています」。2月15日、東洋経済などの取材に応じた大塚家具の大塚久美子社長は、こう吐露した。

大塚家具は同日、2018年12月期決算とともに第三者割当増資の実施を発表した。引受先となるのは、日本と中国の間で越境ECを手がける「ハイラインズ」を中心とした日中企業などが構成する投資ファンドと、米系投資ファンド「イーストモア」。双方から計約38億円を調達する。別枠で、ハイラインズとイーストモアなどに新株予約権を発行し、調達額は最大で約76億円となる見通しだ。

10社以上に資金援助を打診

2018年12月期決算は、売上高373億円(前期比9%減)、営業赤字51億円(前期も51億円の赤字)と、3期連続の赤字に沈んだ。販売不振で現預金が急減した同社は、昨年6月頃から資金調達先を探してきた。日本政策投資銀行などとの間で締結していた50億円を上限とする融資枠は昨年10月に解除。銀行の後ろ盾がない中、切り売りを進めた保有不動産や有価証券も底を突き始め、スポンサーの確保が急務となっていた。

10社以上に資金援助の打診をしたものの、経営権の所在などをめぐり交渉は難航。最終的に候補に挙がったのが、中国で約220店舗を持ち、アリババグループが10%出資する家具販売大手の「居然之家(イージーホーム)」だった。イージーホームは大塚家具の接客サービスのノウハウなどに関心を持ち、昨年12月に業務提携を締結。資本提携を検討していることも明らかにした。

大塚家具の有明ショールーム。店舗面積を減らし、昨年リニューアルを行なった(記者撮影)

だが、今回の出資スキームにイージーホームは入っていない。イージーホームは中国で株式上場準備を進めている関係で、早急な資本提携の締結には難色を示した。資金確保に焦る大塚家具に対し救いの手を差し伸べたのが、もともとイージーホームと取引があり、大塚家具とイージーホームの”橋渡し役”にもなったハイラインズだ。

ハイラインズは3社の取引先などから出資を募って投資ファンドを形成した。2018年末時点で大塚家具の筆頭株主は創業家の資産管理会社「ききょう企画」だが、増資後の大株主はイーストモア、ハイラインズを中心とした投資ファンド、ききょう企画の順序に入れ替わる。経営権は引き続き久美子社長が持つが、ハイラインズから役員を受け入れる方向で調整を進めている。

増資の決定を受け、久美子社長は「本格的に海外に出て行く」と宣言した。日本家具を中国に向けて販売するだけでなく、中国の高級家具の輸入販売も視野に入れる。4月にも越境ECでの販売を予定しており、増資資金の一部を物流体制の整備やシステム開発に当てる計画だ。「イージーホームとハイラインズの2社の助けを得られるので、自分たちだけでビジネスをやるより成功の可能性は数段高まる」(久美子社長)。

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