東海テレビ「ドキュメンタリー映画」への執念 プロデューサー&監督に聞いた「続ける理由」

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映画『眠る村』は東海テレビの取材班が村に通いつめて完成させたドキュメンタリー作品。テレビでも放映されているが、映画は放送時間を気にせず、充実した内容に再編集されている ©東海テレビ放送
「名張毒ぶどう酒事件」をご存知だろうか?
1961年、三重と奈良にまたがる山間の村で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡するという事件が起きた。東海3県をエリアとする東海テレビは、半世紀以上にもわたってこの事件を追い続けている。
今回、東海テレビが事件を扱ったものとしては7作目のドキュメンタリー『眠る村』(ナレーション=仲代達矢、ポレポレ東中野・名古屋シネマテークほかで公開中)を観るまで、「冤罪」の疑いのある事件というぐらいのぼんやりとした認識しかなかった。
しかし観たときの衝撃は大きかった。驚きは、事件から6日後、村の住人・奥西勝が逮捕されると、村人たちが重要な「証言」を変更していったことだ。公判で奥西は「自白は強要されたものと」と訴え、1審の津地方裁判所の判決では無罪が言い渡された。しかし、2審の名古屋高裁では異例の逆転「死刑」。最高裁の上告棄却で刑が確定した後も、再審請求が重ねられることになる。
『眠る村』は2015年、奥西勝が89歳で獄中死した後、東海テレビの取材班が村に通いつめて完成させたドキュメンタリー映画である。今回、この作品を手掛けた東海テレビの齊藤潤一監督と阿武野勝彦プロデューサーに、作品を作った理由、そして「東海テレビのドキュメンタリー力」について聞いた。

「名張毒ぶどう酒事件」を半世紀以上追う

──『眠る村』の感想を一言でまとめると、山間の小さな村から「ニッポン」が見えてくる。不思議な構造の事件映画ですね。

齊藤:『眠る村』は、東海テレビが作った「名張毒ぶどう酒事件」のドキュメンタリーの番組としては、1987年の『証言 調査報道・名張ぶどう酒事件』以来7作目(劇場公開作品としては3作目)になります。作品のたびに、視点を変えながら描いてきましたが、奥西さんが2015年に獄中で亡くなったことで、村の人たちに変化があるかもしれない。そういう期待も込めて、もう1回村を取材することにしました。

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