お金がいくらあっても「足りない」と思うワケ 「満たされた」感覚が全く得られないヤバさ

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お金はいくらあっても満たされることがない(写真:Graphs/PIXTA)  
食欲や睡眠欲もある程度充足すれば、満足感は得られるもの。ですが、いくらあっても満足感が得られないのが、「お金に対する欲求」です。金銭欲はなぜ収まりづらいのか? 作家・元外務省主任分析官の佐藤優さんが解説します。

お金には「限界効用逓減の法則」が当てはまりません。具体的にいうと、例えばどんなに好きな食べ物でも、ある程度食べてお腹が膨らんだらもういらないと思うでしょう。どんなにお酒が好きな人だって、ウォッカを3本も空けたらもうお酒を見るのも嫌になるはず。

これが「限界効用の逓減」で、ある程度手に入れたら「満たされた」という感覚や「もうたくさん」という感覚になる。つまり充足することで欲望が減少するわけです。

ところがお金だけは違う。100万円を手に入れたら次は1000万円がほしいと思う。1000万円手に入れたら、今度は1億円がほしいと思う。欲望に際限がない、つまり「限界効用が逓減しない」のです。

これがお金の怖いところで、一種麻薬に似ています。どんどんエスカレートして、それがないと不安になり、けっして満ち足りるということがありません。

お金の欲求は際限なくエスカレートするもの

外交の世界では「情報を金で買うな」という鉄則があります。ある人物から情報を得ようとする際、お金の力に頼るのがいちばん簡単に見えます。しかし相手が報酬に味をしめて金額を吊り上げてきたり、金銭の額に応じて情報の質を変えてきたりする可能性がある。しかも場合によっては、より高い報酬を支払う別の第三者に寝返る可能性もあります。

インテリジェンスの人間にとっては、情報の質こそが最大のポイント。ですから、お金に執着の強い人間には警戒して近づこうとしません。そういう人の特徴は、お金を請求するときに積算根拠のないお金を要求してくることです。

例えば10万円必要だとなったとき、これとこの資料を買い、相手と会食するのにいくら必要だというように、その内訳を明示できる人は大丈夫。多少それに上乗せをすることはあっても、法外なお金を要求することはまずありません。

あとは要求金額は高くても、ちゃんとした理由がある人物。自分の娘が病気で医療費がかかるなどの事情がある人は報酬を吹っかけてきますが、理由があるのでその後要求がエスカレートする危険は少ない。

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