「#MeToo」を一時の流行にしない社会はつくれる

国外の状況を知り被害者を守る制度整備を

安田菜津紀さんが取材で話を聞いた、かつてISの兵士と結婚を強制させられたという、当時13歳だった少女。彼女もまた性暴力を受けていた(Ⓒ安田菜津紀)
2017年後半からSNSを中心に広まった「#MeToo」運動。これまでに公になることが少なかった性暴力の実態が可視化され、社会問題として大きなうねりをつくりだした。自伝『THE LAST GIRL』で凄絶な性暴力の実態を公表したナディア・ムラドさんが2018年にノーベル平和賞を受賞したことは、この潮流のなかに位置付けることができる。
前回(「性暴力被害の実態を共有できる社会が必要だ」)に引き続き、今回も評論家の荻上チキさん、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん、ジャーナリストの伊藤詩織さんに海外で進んでいるハラスメントや性暴力への法整備、これから必要な対策について語ってもらった。

多くの声が上がった「#MeToo」

荻上チキさん(以下、荻上):前回の座談会冒頭でも言及しましたが、ナディア・ムラドさんとデニ・ムクウェゲさんのお二人がノーベル平和賞を受賞した背景には、蔓延する性暴力の問題に対する「No」という意志、そして、「#MeToo」運動の影響があったように思います。

伊藤詩織さん(以下、伊藤):著名な映画プロデューサーによる長年の性暴力が報道されたことをきっかけに、2017年10月、#MeToo運動が世界的に広がりました。それを受けて、スウェーデンでは性行為には必ず互いの合意を必要だとする法改正が行われるなど、大きな影響を与えています。「#MeToo運動の行きすぎで社会が息詰まる」と主張する声もありますが、賛否両論を含めて、この訴えが世界中で同時に続いていることは、大きな意義があります。

荻上:特定の担い手に限定されず、共感を伴って拡散されたのは、「#MeToo」というハッシュタグでの運動であることが大きいでしょう。

伊藤:2018年10月にはBBCのラジオ番組で、#MeToo運動をテーマにジョージアで初のセクハラ裁判を起こした女性と電話対談をしました。ジョージアにも日本と同様にセクハラを取り締まる刑法はなく、テレビ局で働いていた彼女は、被害を訴えたことで職を失っただけでなくオンラインでのバッシングに苦しみました。

日本とジョージア、互いにそれほどなじみのある方は多くないでしょう。それが、セクハラの問題をきっかけに交流し、それがイギリスで共有された。これまで接点の薄かった国の人たちとも連帯できたのが、#MeToo運動が起こした力ではないでしょうか。

安田菜津紀さん(以下、安田):それに加えて、性暴力をめぐる論点がより具体的になったということもあります。

2018年、アイルランドで17歳の女の子がレイプの被害者となり、裁判が行われました。そこで加害者側の弁護士が「被害者はレース地の下着を付けていたから、性に積極的だったはず」と主張し、加害者が無罪になった。それに対しSNS上で猛抗議が起こりました。「#ThisIsNotConsent」(これは合意ではない)とハッシュタグを付けて、下着の写真をツイートするというものです。

次ページ海外で進む性暴力に関する法整備
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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。