ウナギ流通の暗部「密漁ビジネス」の実態

市場に出回る3分の2が密漁ルートの見方も

二ホンウナギが絶滅危惧種IBに指定されてから3年が経過したが、水産業界では今、どのような事態が起こっているのだろうか(写真:mauribo/iStock)
「まだ読んでないの?」と話題のノンフィクション、鈴木智彦さんの『サカナとヤクザ――暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館)から読みどころをお届けする最終回。市場に出回る品の3分の2が密漁・密流通とも言われる、密漁ビジネスの闇中の闇・ウナギ業界の暗部に迫ります。

ウナギを食べるのはパンダを食べるのと同じ?

平成26年、ウナギショックが日本を席巻した。

ニホンウナギがIUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種IB類に指定され、夏の風物詩である土用の丑の日を控えた時期の発表だったことも重なって、日本人が「近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い」種を大量消費していると大騒ぎになったのである。同じ分類にはジャイアント・パンダやアジアゾウなどがいる。

「パンダのように稀少な生き物を食べているのか」

と不安になった人もいるだろう。

「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です

実際、日本人は世界のウナギを食い尽くしてきた。安価なウナギの供給源は中国の養鰻(ようまん)池で飼育されるヨーロッパウナギだった。大手の商社・水産業者はどんどん中国の養鰻場を拡張し、稚魚であるシラスウナギを輸入して、活鰻や蒲焼きを輸出していた。ウナギはファスト・フード化し、コンビニや牛丼のチェーン店などでも提供されるようになっていった。東京にもヨーロッパウナギを提供していた老舗がある。

平成20年、激減したヨーロッパウナギはニホンウナギに先んじて絶滅危惧種IA類に指定された。最も深刻な評価だった。翌21年にはワシントン条約の附属書IIにも載り、許可なしでの取引が禁止された。EU(欧州連合)は域外との取引を全面的に禁止しているので、原則、全面禁輸といっていい。

ヨーロッパウナギが入手できなくなったことで、日本向けにウナギを養殖している業者はアメリカウナギや東南アジアのビカーラ種で代用しようと試行錯誤を続けた。絶滅すれば次のウナギ……そこにヨーロッパウナギを食い尽くしてしまった過去に対する反省はなかった。

しかし、アメリカウナギはニホンウナギと同じIB類指定であり、ビカーラ種もまた準絶滅危惧種である。なにより異種ウナギには養殖のノウハウがなく、共食いなどで歩留まりが悪い上、そもそも味が落ちる。ベンチャー企業などが乗り出した異種ウナギ養鰻は下火となり、需要はニホンウナギに回帰した。

次ページ絶滅危惧種騒動の翌年からブローカーが暗躍
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